2019 Fiscal Year Research-status Report
空間情報技術を活用した自然資源管理のための生態系及び社会性レジリエンス指標の算出
Project/Area Number |
18K11770
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
下嶋 聖 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (60439883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 伸一 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (70311272)
山崎 晃司 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (40568424)
関岡 東生 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (00287450)
土屋 薫 江戸川大学, 社会学部, 教授 (60227428)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ケラマジカ / 土地被覆 / 景観変遷 / GIS / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国内最南端に位置するシカ生息地である沖縄県慶良間諸島を対象に、空間情報技術を活用した慶良間諸島の景観変遷の定量化とその変遷が島嶼環境下に生息するケラマジカの生態に与える影響について明らかにし、閉鎖環境特有の環境圧や攪乱を経て維持されたヒトとケラマジカの共生関係に見られるレジリエンスの指標の作成と評価を目的としている。2年目にあたる2019年は、次に示す研究課題を取り組むこととしていた。 調査①文献資料及びケラマジカに関する歴史・文化的事象に関するヒアリング調査:ケラマジカに関する文献収集と1955(昭和30)年に琉球政府によりケラマジカが天然記念物として指定される以前の社会環境を記憶されている住民に対してヒアリング調査を実施し、ケラマジカの社会環境史を明らかにする。 調査②リモートセンシング画像を用いたケラマジカ生息環境の変遷の把握:慶良間諸島の旧版地図、空中写真及び高分解能衛星画像を収集し、過去から現在までの土地利用変遷の把握を行う。得られた土地利用の変遷について、遷移確率行列を算出し、ケラマジカ生息環境の変遷の定量化を行う。 2019年6月に現地調査を実施し、行政関係者及び地元住民に対してケラマジカに関する歴史・文化的事象に関するヒアリング調査を行った。併せて、関連する文献収集も行った。 ヒアリング調査の結果より、ケラマジカに関する直接的事象の把握に加え、地域住民の暮らしや文化の側面からのアプローチすることにより、島嶼特有の産業(生業)構造と歴史的変遷から、ケラマジカの島民との位置づけの一端を明らかにすることができた。直接的なデータ及び資料の入手は困難であることから、間接的相互関係からケラマジカの位置づけを明らかにするためのアプローチ方法の検討が行えた。なお林業経済誌(一般財団法人 林業経済研究所)のコラム欄において、本科研費の研究内容の一部を紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献資料及びケラマジカに関する歴史・文化的事象に関するヒアリング調査より、これまで研究代表者が入手していなかった、ケラマジカに関する新たな文献収集が行えた。1955(昭和30)年に琉球政府によりケラマジカが天然記念物として指定される以前の社会環境を記憶されている住民に対してヒアリング調査を実施し、当時、島嶼特有の産業(生業)であった、鰹節生産の実態を知ることで、間接的に周囲の土地利用の状況を把握することができた。鰹節生産のため、多くの薪を使用したことから、島内の森林地は、薪炭林として大部分の箇所で伐採等活用されていたことが明らかとなった。 次にリモートセンシング画像を用いたケラマジカ生息環境の変遷の把握において、既に収集した慶良間諸島の旧版地図、空中写真の幾何補正等などジオレファレンス作業を行い、オーバーレイ解析を実施するためのプラットフォームの構築を行った。島嶼のため位置情報の精度検証について、画像内に写り込む陸域が少ないことから絶対位置の参照手法の検討を実施している。十分な精度が得られた後、土地利用変遷の把握を行う。 なお、次年度(2020)以降に実施する、原単位法によるケラマジカ1頭あたりの必要生息面積の推定に求めれる、ケラマジカ生息に必要な採食量に相当する植物群落及び群落面積の予備調査を実施した。しかし2019年6月に実施した現地調査は悪天候に見舞われ、外観観察のみに留まり、次年度以降に改めて植生調査の実施を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度においては、ヒアリング調査による得られた島内における産業と土地利用の関係から、空中写真で目視確認していた草地のように見えていたオープンスペースが薪炭林としての利用実態であることが明らかとなった。そのため、引き続き座間味諸島における産業実態を示す統計データや沖縄本島との物流に関する資料収集を行い、漁獲高、鰹節生産量、販売実績等経済収支の実態解明に着手する。併せて、幾何補正済みの過去数時期の空中写真より草地、薪炭林の面積割合と分布形状の把握を行い、ケラマジカの景観生態的な動態の解明を行う。 研究課題として挙げていて、異なる環境圧下におけるケラマジカの動態とその応答について、GPS受信機を用いた有人島、無人島別に見るケラマジカの行動把握と有人島内におけるケラマジカの行動特性を明らかにする。ただし次年度(2020年度)は、コロナ禍の状況下のなか、当該地は島嶼環境であるため感染拡大防止が難しく、現地調査の実施と時期の判断が困難な状況である。現地調査はやむなく最終年にあたる次々年度(2021年度)における実施も視野に、研究推進方法の検討を行う。一方、これまで収集及び解析したリモートセンシングデータを用いて、原単位法によるケラマジカ1頭あたりの必要生息面積の推定について、ケラマジカの生息域が陸域に限られていることを与条件として、ケラマジカ1頭あたりの生息に必要な単位面積の試算を行う。今後、上記の現地調査で得られたグランドトゥルースをもとに、より正確なケラマジカ1頭あたりの必要生息面積の推定の算出を試みる。
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Causes of Carryover |
2019年度内に現地調査を2回実施する予定であった。1回目は6月に実施し、2回目は3月頃を検討していたが、コロナ禍の影響により、現地調査の実施を見送った。また当初計画では、UAV(ドローン)購入を行い、空撮より超高分解能画像を取得し予定していたが、上記の理由と購入予定機種の生産会社が中国であるため、コロナ禍の影響により生産が止まり、入手困難となったため、購入を見送った。その結果、次年度使用額が生じることとなった。次年度以降はリモートセンシング画像を用いたケラマジカ生息環境の変遷の把握の検証をさらに進めるため、入手していない時期の空中写真等リモートセンシングデータの購入を予定している。
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