2021 Fiscal Year Research-status Report
空間情報技術を活用した自然資源管理のための生態系及び社会性レジリエンス指標の算出
Project/Area Number |
18K11770
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
下嶋 聖 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (60439883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 伸一 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (70311272)
山崎 晃司 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (40568424)
関岡 東生 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (00287450)
土屋 薫 江戸川大学, 社会学部, 教授 (60227428)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ケラマジカ / 土地被覆 / 景観変遷 / GIS / リモートセンシング / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国内最南端に位置するシカ生息地である沖縄県慶良間諸島を対象に、地理情報システム(GIS)及びリモートセンシング技術に代表される空間情報技術を活用した慶良間諸島の景観変遷の定量化とその変遷が島嶼環境下に生息するケラマジカの生態に与える影響について明らかにし、閉鎖環境特有の環境圧や攪乱を経て維持されたヒトとケラマジカの共生関係に見られるレジリエンスの指標の作成と評価を行うことを目的としている。4年目の2021年は、2017年から2020年に実施した調査並びに解析結果を基に、次に示す研究課題を取り組むこととしていた。 検証①得られたレジリエンス指標を用いた他の地域における適用度の検証:最終年度において、本研究で得られたレジリエンス指標法を用いて本州(特に南アルプスなど山岳地)を対象に、本研究の適用度の検証を試みて実用性の自己評価を試みる。 2021年も2020年と同様にコロナ禍に見舞われたことにより、現地調査は全て中止した。2017年から2020年に実施した調査並びに解析結果を基に、ケラマジカ生息環境の変遷の把握で得られた土地利用の変遷から原単位法による必要生息面積の推定を行った。解析結果より4 島合計の陸地面積に占める森林面積は、1962 年で15%、1977 年で 31%、1984年で 47%、1996 年で 51%、2001 年で 59%であった。既存調査より4 島全体でのケラマジカ個体数は、1970 年代で約 60 頭、1990年代で約 230 頭、2000年代年で約120頭とされている。このことから1970 年代におけるケラマジカ 1 頭あたりの森林面積(原単位)は約 3.5ha、1990年代で約 1.7ha 、2000年代では約3.9haであった。1995 年前後のケラマジカは森林面積に対し高密度で生育していたことが推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年以降見舞われているコロナ禍により、現地調査の実施が難しい状況にあるため、2019年度に実施した「調査②リモートセンシング画像を用いたケラマジカ生息環境の変遷の把握で得られた土地利用の変遷」について、引き続き他機関で撮影された空中写真の収集を行い、景観変遷の把握の精度向上を試みた。現在のところ6 時期の空中写真を用いて土地被覆変遷の定量化とケラマジカ個体数の原単位算出を行った。 一方、現地調査から得られるケラマジカの行動観察、植生環境等、ケラマジカ生息に必要な採食量に相当する植物群落及び群落面積について時期ごとに推定が行えていない。そこで、既存のケラマジマに関する生態報告書を基に、過去の植物群落及び群落面積よりケラマジカ生息に必要な採食量の推定方法を検討した。 上記の既往文献に加え、空中写真から抽出した土地被覆変遷を把握し、6時期における森林及び草地の増加、喪失傾向を明らかにした。しかしながら、植生環境は、高木層以下の亜高木や低木層等3次元的に植生環境を把握する必要があるため、ケラマジカ生息に必要な採食量の推定の精度向上には現地調査のデータの取得が必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年以降見舞われているコロナ禍により、最終年にあたる2021年度内に現地調査の実施が出来なかった。2022年度延長申請を行ったため、2022年度内に現地調査の実施を検討する。コロナ感染状況及び現地の社会情勢によるが、実施時期の候補としては、9月末から10月、もしくは11月での実施を予定している。現地調査では、1.原単位法に基づくケラマジカ生態的収容力の算出:ケラマジカ生息に必要な採食量に相当する植物群落及び群落面積植物群落及び群落面積の把握、2.異なる環境圧下におけるケラマジカの動態とその応答:有人島及び無人島において、ケラマジカの行動観察、ライトセンサス調査を行い、ケラマジカの糞サンプルを収集し、糞表面の微生物環境の把握を試み、ケラマジカの行動生態の基礎的知見を得る、3.ケラマジカの生態系保全及び食農資源利用に向けたレジリエンス指標の作成:ケラマジカの環境史、慶良間諸島の植生環境、ケラマジカの行動特性から得られたデータを指標化し、エコツアーなど観光資源や食農資源利用としての可能性と地域社会と生態系保全の両立を目指した持続的管理手法の構築を行う。
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Causes of Carryover |
2021年度内に現地調査を2回実施する予定であった。1回目は6月に実施し、2回目は9月または10月頃に実施する予定であった。しかしコロナ禍により緊急事態宣言発出や社会情勢的に現地調査の実施が不可能となったため、実施を見送った。そのため次年度使用額が生じることとなった。次年度は、現地調査の実施に充てる。なお万が一コロナ禍の回復が望めなかった場合は、高分解能衛星画像ないし合成開口レーダー画像等を使用した画像解析に供する画像購入に充てることを検討する。
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Research Products
(1 results)