2020 Fiscal Year Annual Research Report
"Alternative Fiction "and the "Co-Prosperity"in Wartime Japan: Media Mix Research
Project/Area Number |
18K11833
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
大塚 英志 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (20441355)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 翼賛一家 / メディアミックス / メディア・コンヴァージェンス / 報道技術研究会 / 今泉武治 / メディア理論 / 映画的 / プラットフォーム |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は台湾、あるいは中国での「翼賛一家」に関わる補足的調査を予定していたがコロナの影響で海外渡航が困難となり、戦時下のメディア間の連動がいかにして理論化されあるいは実践されたかについての国内資料収集及び調査を集中的に行なった。 理論化の過程については、報道技術研究会の理論的中心となる今泉武治の1930年代のアルバム、ノート、切り抜きなどから、映画理論と写真の実践が接合していく中で「映画的」という用語がメディア間を横断する概念として浮上していく様が資料的にトレースできた。そこには「理論」と「実践」の相互のフィードバックによる芸術理論の応用工学化とも言える戦時下メディア理論形成の特徴が具体的に見て取れた。 この複数のメデイア表現の統合は本来、大正新興美術運動や新興写真で実践された技法であったが、翼賛体制下、メディア表現を含む諸表現が表現領域ごとに単一団体化し領域内統治を行うのに対し、報道技術研究会を中心に「編集」「構成」といった概念によって広告内部に複数の表現を統合したり、複数の表現を連動させる考え方が積極的に整理されていき、現在でいうメディア・コンヴァージェンスに向かう過程が確認でき、それが国家広告の領域で精緻化した技法だということが見えてきた。 戦後の「メディアミックス」という語は、報道技術研究会など戦時プロパガンダの理論家・実践者によって1960年代に「用語」として登場するが、それが理論と実践において戦時下、準備されていたのである。多メディア展開自体は、15年戦争以前からあるが、戦時広告は翼賛会や情報局などが上位でメディア間のつながりを統治することで可能となり、それが、戦後の広告代理店によるコンテンツを含むメディアミックスの「統治」の原型となり、最終的にプラットフォームの基礎となって行くという見通しが立てられた。
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