2019 Fiscal Year Research-status Report
可視チェレンコフ放射によるTHz帯コヒーレント放射の完全同期電場検出法の開発
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18K11919
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 俊晴 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (00273532)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テラヘルツ / チェレンコフ放射 / 遷移放射 / EO検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、電子ライナックの短バンチ電子ビームから発生するサブテラヘルツ領域の大強度コヒーレント遷移放射の電場を、外部レーザーを使わず、同一バンチから発生する可視域チェレンコフ放射をプローブとして電気光学(EO)検出する技術を開発することである。当初の平成31(令和元)年度の実施計画では、誘電体多層膜フィルター表面に施した金属蒸着膜、ITOガラス(スズドープインジウム酸化物光透明電極)を放射体としたTHz帯コヒーレント遷移放射(CTR)の分光測定を行い、放射強度やスペクトル分布、偏光度などを実験的に調べ、金属箔からのCTRとの相違を明らかにする予定であった。しかし平成30年度に予定していた実験が完了していなかったことから、引き続き当該年度の実験であった、誘電体多層膜フィルター、ITOガラス、形状を変えた溶融石英など、数種類の誘電体からの可視域チェレンコフ放射の基礎的性質を実験的に調べた。検出器としてSiフォトダイオードを使用したが、検出感度が低いため精度の良いデータを得ることができなかった。より感度の高い光電子増倍管を用いる必要がある。また、誘電体を放射体として使用する場合は電子ビームによるダメージが大きいため、マクロパルス幅を狭くし、パルス繰り返し周波数を小さくする必要があることがわかった。また、電子ビームの照射を続けることで変色していくことから、可視域チェレンコフ放射の測定にはスペクトルの経時変化など注意を要することも判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
誘電体多層膜の電子ビームによるダメージが想定していたものより大きく、それに代わる放射体材料の調査が必要になったこと、及び、世界的な液体ヘリウムの供給不足により入手が不安定になっているためである。令和2年度にこれらの課題が解決し、十分な加速器ビームタイムが確保できれば、本研究は進展する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、誘電体多層膜に代わる電子ビーム照射に強い放射体材料を加速器ビームタイムまでに調査、購入する予定である。その材料を放射体として可視域チェレンコフ放射の分光測定、及びTHz帯遷移放射の分光測定を行い、放射強度、スペクトル分布、偏光度などの取得データを通して、通常の金属箔からのTHz帯遷移放射との違いを調べ、EO検出の放射体材料としての適性を調べる。
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Causes of Carryover |
テラヘルツ帯の分光測定では検出器の冷却に液体ヘリウムを使用するが、世界的な液体ヘリウムの供給不足のため、適切な時期に十分な量を確保することができなかった。令和2年度は引き続き液体ヘリウムの入手に努力すると共に、誘電体多層膜に代わる電子ビーム照射に強い放射体材料を調査し購入する予定である。
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