2018 Fiscal Year Research-status Report
米国所在の占領期東京写真関連コレクションのカタロギングと写真読解手法の一般化
Project/Area Number |
18K11999
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 洋一 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (10277832)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 占領期 / 写真 / アーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
第二次大戦終戦直後の日本の都市において、アメリカ人が撮影した写真を対象として米国内で調査した。3ヶ月間で、14カ所の機関で、82のコレクション。複写撮影した写真は38,922枚である。調査先は以下の通りである。 1.University of Maryland , 2.National Archives at College Park 3.Lafayette College Library, 4.MacArthur Memorial Archives and Library, 5.Hoover Institution Archives, 6.Stanford University, 7.UC Berkeley, 8.UC Santa Barbara, 9.UC Irvine, 10.UCLA, 11.University of Southern California, 12.Getty Research Institute, 13.UC San Diego, 14.Florida State University(The Institute on World War II and the Human Experience) 触れることができたコレクションは82であり、現地での複写撮影カット数は38,922カットであった。この調査はより包括的に多くのコレクションを見ようとするもので、現在も継続中である。本調査に関しては、2018年度中に2つの小論にまとめ、論文集および所属学部の紀要に寄稿し、現在掲載待ちの状態である。その他、調査の一端を紹介するワークショップを二回、さらに調査概要の展示を一回行なった。また2019年4月より次年度の調査のために滞米している期間中に、ワシントンDCで調査内容を報告するシンポジウムにスピーカーとして参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実際の調査では想定以上の資料が現地で見つかっているためである。当初の目標としていた100コレクションの閲覧はすでに達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
米国での調査では、多くの写真に触れることができた。この調査の過程に通底する問いとは、終戦直後のアメリカ人が撮った写真とはどのようなものであるかである。筆者の役割は、見つけた写真を日本で紹介することであるが、個別の面白い写真だけを紹介することではないだろう。面白い写真とは、皆が見たい写真だが、写真にできることは皆が見たいものを提示することではない。つまり、考えるべきは、個別の写真の集合から、いかにして共通性を見出し、それを構造的に伝えられるかということである。とりあえず手がかりとなると思われるのは、以下の3つの読み方、すなわち①写っているものを読むこと、②撮影行為を読むこと、③なぜ撮ったのかを読むこと、である。こうした視点から、データベースによる整理を進めている。 個人的に撮影をしていた複数の撮影者の写真に共通する被写体の系統としては、大まかには、戦後処理に関する事物、都市的な景観や事物、都市空間における民俗的な事物、農村などでの土着的な事物、観光地での事物などに分けることができそうである。系統の中でさらに具体的な被写体を細かに検討して行くことも可能である。これまでにわが国では写真記録がなかった事物や風物が彼らの写真の中に見いだせることも珍しくない。撮影された事物の事典を作るように、写真に含まれる語彙を細かに捉えて行く作業は、誰にでも理解しやすい。作業をある一定の範囲内に収めていく工夫も必要となる。 一方、共通の事物や人物を撮影した写真を並べて比較し、撮影者それぞれの捉え方や共通する捉え方を細かに浮き彫りにすることもできる。そこに浮かび上がるのは、ある事物の写真に関わる空間性や関係性である。鎌倉の大仏は、その撮り方、すなわちどの位置からどの方向でカメラを向けたのか、写真記録に関わる空間性が見える。また被写体として極めて頻繁に現れる日本の子供たちからも、被写体との関係性が見える。
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Research Products
(4 results)