2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K12027
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岡本 博之 金沢大学, 保健学系, 准教授 (20272982)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 位相イメージング / X線 / 放射光 / 屈折像 / 散乱像 / 分解能評価 / 繊維状物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度では、既に開発済みの位相像の分解能定量評価法の開発成果を利用し、本研究課題における第二段階の目的であった、撮影条件の最適化についての手法を確立することができた。具体的には、令和元年度までに開発した、高精度の屈折角分解能定量評価用試料、および散乱角分解能定量評価用試料を用いて、諸条件下における分解能評価を行った。その結果、20 keVのX線を使用した単スリットを用いた位相イメージング法について、試料と検出器間距離が約0.8 mまでは距離とともに分解能が向上するが、それ以上になると、屈折像、散乱像ともに分解能はあまり変化しないことが分かった。この距離は、応用において現実的な距離であることも確認できた。さらに、本手法で重要な役割を成すスリットについては、これまでCCDカメラのピクセルサイズが6.3 μmであることを考慮し、10 μm幅のものが適切と考えていたが、上記評価を通じて、実際には20 μm幅のものを使用する方が高分解能であることを確認できた。この事実は、これまでの想定と異なっており分解能の評価を行うことで初めて確認できた。その結果、露出時間や試料の移動ステップを見直すことで、撮影時間の大幅な短縮が可能となった。 上記の成果に加え、令和2年度に確認した散乱像の方位依存性評価による繊維状物質の検出法について、位相イメージング法の標準的手法である拡張型DEI法による結果と比較を行った。その結果、単スリットを用いる手法の方が検出感度は劣るが、同様の結果が得られることも確認できた。このことは、本手法の応用範囲をさらに広げる成果である。 さらには、これらの成果の一部を論文化することもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題における第二段階の目的としていた、位相イメージング装置における屈折像、散乱像の分解能評価法を利用した撮影条件の最適化については達成できた。そして今回得られた、屈折角分解能のサイズ依存性評価、散乱像に関する分解能の評価などの結果を通じて、最適条件を客観的に見つけ出すことが出来るという成果は、これまで試されたことが無く十分に独自性を示すことが出来た。 加えて、繊維状物質を検出、画像化する手法について、標準的手法との比較で、その妥当性が確認できたことは本手法の応用範囲を広げるために、貢献できる成果である。 しかしながら、本研究を遂行するためには必須の施設である高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所を、2020年1月以降から想定していた使用時間の1/4程度しか利用できていないため、第三段階として予定していた、高エネルギーX線を利用した撮影技術の開発が行えていない。これは、2020年当初より感染が広がっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として実施された緊急事態宣言の為、研究所への出張および実験が困難となっているためである。この予期せぬ状況の為、補助事業期間延長承認申請を行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を遂行するためには、放射光の利用は必須である。したがって、現状のように高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所が利用できないことは、致命的な問題である。しかし、少なくとも令和3年度前半においての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)収束は見通せないと思われる。そこで現在、申請者が所属する大学に設置されている、管球タイプのX線発生装置にこれまでの成果を応用し、本研究課題を遂行する方法を探っている。原理的には本研究で使用している方法は、管球タイプのX線発生装置でも応用可能である。しかし現実には、X線光源の発光点サイズの違い、検出器のピクセルサイズの違い、制御機構の違いなどにおいて異なる部分が多く、現時点において有用な成果が得られていない状況である。現在、光学系の設計や制御用ソフトウェアを見直して、位相像を得る方法を検討している。 なお、令和3年度後半においてはワクチン接種が全国的に実施されていると思われるため、高エネルギー加速器研究機構での実験を再開し、不足している実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年1月以降において、高エネルギー加速器研究機構での実験が、想定していた使用時間の1/4程度しか実施できていない。これは、令和2年当初より感染が広がっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として実施された緊急事態宣言の影響により、研究所への出張および実験が困難となっているためである。そのため、予定していた出張のための経費、およびデータ保管用のハードディスクの購入が不要となった。また、それらの影響により、期待していたデータが集まらず、論文化に使用する予定であった経費も不要となった。これらの理由により、未使用額が生じた。 その対策として、申請者が所属する大学に設置されている、管球タイプのX線発生装置を使用した実験を準備中である。また、令和3年度においてはワクチン接種が全国的に実施される予定であるため、年度後半においては感染状況の改善が予想される。そこでこの時点から、高エネルギー加速器研究機構での実験を再開し、不足している実験を行う予定である。これらが計画通りに進んだ場合、本申請において予定していた研究内容のかなりの部分は実施可能である。そのため、先年度の未使用額は研究所への出張経費、データ保存用ハードディスク購入費、論文化のための費用として使用予定である。
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