2018 Fiscal Year Research-status Report
生体組織様ヒト立体バイオ心筋組織の遠心力による迅速な作製法の確立
Project/Area Number |
18K12068
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
原口 裕次 東京女子医科大学, 医学部, 特任講師 (80272251)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 迅速立体組織作製 / 細胞間接着 / プレート遠心機 / 遠心力制御 / 藻類共培養 / 組織移植 / ヒト心筋組織 / 温調機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに開発した温調機能付きプレート遠心機を用い37℃で遠心を行い立体心筋組織の作製を行ってきた。C2C12マウス骨格筋芽細胞株を用いた場合バラバラの細胞を温度応答性培養皿上に播種し、37℃で加温下80 x gで30分間の遠心処理を行い、その後20℃で1時間の低温処理により、立体組織を作製・回収できることが分かった。その立体組織は細胞シート移植デバイス(Biomaterials、34(36)、9018-9025、2013)で移動することが可能な強度を持った組織であった。すなわち温調機能付きプレート遠心機を用いることで細胞間接着が強固な細胞C2C12骨格筋芽細胞は、細胞播種後90分ほどで移植可能な組織を作製可能であることが分かった(Biotechnology Progress、34(6)、1447-1453、2018)。作製した立体組織は最初に播種する細胞数を変えることで組織厚を制御できることも分かった。またヒトiPS細胞由来心筋細胞を細胞外電位記録システム用プローブ上に播種後、同様の遠心処理を行い、さらに遠心操作後37℃で3時間培養した立体心筋組織の電気生理学解析を行ったところ、心筋組織は電気的に結合していることが分かった(Biotechnology Progress、34(6)、1447-1453、2018)。一方でプレートにかかる遠心力を最適に制御することで、遠心力をさらに強めても組織の滑りや変形の悪影響を起こすことなく細胞シート立体組織と培養皿の接着を速めることが出来た。細胞からのLDH放出量および細胞のグルコース代謝を解析したところ、今回用いた遠心処理条件では細胞障害をもたらさないことを示す結果も得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温調機能付き遠心機を用いることで筋芽細胞は温度応答性培養皿を用いることで、細胞播種後90分程度で迅速に移植可能な立体組織を作製できることが分かった。またこの遠心機を用いることで電気的・機能的に結合したヒト心筋組織は3時間30分以内に作製可能であることが分かった。これまで電気的・機能的に結合した厚みを持つ立体心筋組織の作製には数日かかっていたが、本研究プロジェクトにより遠心力を用いることで大幅に作製時間を短縮することが出来た。さらに本研究により遠心プレートにかかる遠心力を最適に制御することで立体組織に悪影響なく培養皿に接着させる方法も確立した。今後この遠心力制御法を用いることで、さらに速やかに立体組織を作製できるか解析していく予定である。また迅速に作製したヒト心筋組織の動物モデルへの移植および配向性を有する立体組織の作製についても今後行う予定である。研究の進捗状況はおおむね研究開始前に立てた研究計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
19年度は温調機能付きプレート遠心機を用い、これまでに確立したプロトコールにより作製した立体組織を小動物モデルへ移植する予定である。作製ヒト心筋組織の小動物モデルへの移植については本研究所において従来法で作製した立体組織の移植法が確立しているので、その方法を用い背部皮下に移植する。また配向性を有する立体組織の作製も行う。配向性を有する立体組織の作製法についても本研究所でいくつかの方法が確立されており、それらの方法を検討し最適な方法を確立する予定である。また遠心力を用いることで組織に配向性を付与する方法も探索していく。作製したヒト心筋組織の生体外における電気的・機能的結合については、これまでにも組織の電気的・機能的結合を解析してきた細胞外電位記録システムを主に用いる予定である。
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Causes of Carryover |
1年目は組織作製プロトコールを確立するためin vitro実験を中心に行い、動物実験を行わなかった。そこで1年目は動物実験に関する研究費を使用しなかったため次年度使用額が生じた。次年度は1年目に確立した組織作製プロトコールを用い迅速に作製した立体組織の実験動物モデルへの移植実験を行い、研究を加速する予定である。またその移植実験の結果を組織作製プロトコールにフィードバックし、より移植しやすくかつ機能的な組織作製プロトコール樹立につなげる。
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