2021 Fiscal Year Research-status Report
The image of the Uranian Venus and its (trans-)formation in nineteenth century British Literature
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18K12326
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
木谷 厳 帝京大学, 教育学部, 教授 (30639571)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シェリー / イギリス・ロマン主義 / 感性 / 詩学 / 天上のヴィーナス / 文学的トポス / アドネイアス / 詩の擁護 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、本年度はイギリス・ロマン派の詩人P. B. シェリーを主たる研究対象とし、この詩人の「感性の詩学」の研究を進めた。前年度にあたる2020年度においては、その詩学の特徴とも密接にかかわる「天上のヴィーナス(Venus Urania)」という超感性的な美の比喩形象が、後世の詩人のあいだでどのように受容されたかを辿る調査を継続していたが、2021年度においては、シェリー没後200周年を迎える2022年に関連学会にて開催が予定されている没後200周年記念大会に備え(また、新型コロナウイルス感染症による感染拡大の影響も重なり)、研究発表の準備に専心した。具体的には、シェリーが同時代の詩人キーツの早すぎる死をうたった哀歌『アドネイアス(_Adonais_)』(1821)の詩文および同時期に出された書簡の検討をもとに、アドネイアス(あるいはアドナイース)の死を嘆く女神ユーレイニアあるいはウラニア(Urania)の表象をめぐり、シェリーが「天上のヴィーナス」の形象を生かしつつ、先行する詩人スペンサーやミルトンらによるユーレイニアのイメージを取り入れながらも、この女神の描き方やその役割を(当時の時代精神に即して)変容させていたのではないか、また、それが、同時期に書かれた『詩の擁護(_A Defence of Poetry_)』(1821)において展開される、詩の神性(divinity)をめぐる詩学にも反映されていたのではないか、という議論を構築するために、E. R. クルティウスによる「文学的トポス(literary topos)」の概念なども参考にしつつ、おもに関連資料の収集とノートの作成を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に起因する、各種学会のオンライン化等のために、海外で研究調査を進める機会が制限されたことから、研究計画の一部は来年度に延期されている。また、「研究実績の概要」の項目においても説明した理由により、今年度は論文の発表や学会での研究発表の実績を残すことができなかった。したがって、研究計画はやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、前年度の計画を継続し、シェリー没後200周年を記念する大会において研究発表をおこなう予定である。また同時に、シェリーの「天上のヴィーナス」の比喩形象をめぐり、ヴィクトリア期以降の詩人や文学批評家のあいだで、それがどのように受容されたかを辿る調査をさらに進めたい。
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Causes of Carryover |
研究調査のための海外渡航計画および海外からの研究者招聘計画等が延期になった結果、その分の予算を次年度に繰り越すことにしたため。
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