2020 Fiscal Year Research-status Report
1960-80年代仏・英語圏の写真キュレイターをめぐる比較文学、比較芸術研究
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18K12353
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
佐々木 悠介 東洋大学, 国際学部, 准教授 (20750730)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヴィヴィアン・マイヤー / 写真 / キュレーション / フェミニズム批評 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度の二月にシカゴ大学にて行った、アメリカの写真家ヴィヴィアン・マイヤー(1926-2009)の未公開資料の調査結果に基づき、学術論文を執筆して成果の公表を行った(佐々木悠介「ヴィヴィアン・マイヤーの生涯と写真における両義性」、東大比較文學會『比較文學研究』106號、特輯「「女」が語る」に寄稿)。生涯を住み込みのナニー(乳母)として過ごしたマイヤーは、生前に膨大な数のストリート写真を撮り溜めていたが、一枚たりとも「作品」として公開しなかった。今日、複数の写真集や展覧会で公開されているものはすべて、遺品のネガや未現像のフィルムを入手したコレクターたちによって没後に「発見」され、プリントされたものである。このことには毀誉褒貶あるが、本研究ではそれ自体の倫理的な問題よりも、そうした没後のキュレーションを端緒としてマイヤーの写真と彼女の謎めいた生涯がどのような言説のもとに語られてきたのかということを明らかにしつつ、遺品に含まれる大量のヴィンテージ・プリントを精査することによって、これまでとは異なるマイヤー像が浮かび上がってくる可能性を提示した。同時に本研究が明らかにしたのは、マイヤー没後の受容言説において、1970年代以降のフェミニズム映像論の影響を受けた現代的な理想の女性像や、さらにはわれわれがアマチュア写真というものに対して抱く幻想のようなものが様々に投影されているということである。これはフェミニズム写真やアマチュア写真といった写真研究の大きな問題系を今後考えていく上で、マイヤーの事例が欠かせないものであるということでもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度はCOVID-19の影響で海外への出張資料調査が一切行えなくなったこと、また異例の事態を受けて勤務先の大学でイレギュラーな対応(授業、学務)を強いられ、そのために多大な時間を要したことから、研究は大幅に遅れていると言わざるを得ない。 海外(本研究で主に関連するのはフランスとアメリカであり、どちらもCOVID-19の影響が大きい)の図書館、美術館も閉館したりサービスを制限したりしているため、複写資料等の取り寄せもスムーズに行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
限定的ではあるが、国内の図書館、美術館で可能な範囲の資料調査を優先して行いたい(ただし、例えば勤務先が協定を結んでいる他大学の図書館も、学外者の入館を制限しており、また美術館の資料室も予約制で一回の利用時間を短くしているなど、制約は大きい)。 海外からの資料取り寄せは可能な範囲で行い、出張調査が可能になった時点で資料調査に行く予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で海外への出張資料調査が行えなくなったため。 今後は勤務先で海外出張が認められる状況になり、かつ出張先の図書館、美術館が調査訪問の受け入れを再開した時点で速やかに調査を行いたい。
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