2018 Fiscal Year Research-status Report
New angle on the Alpine passes in Roman times: influence of "closed passes" upon local societies under the Principate
Project/Area Number |
18K12540
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
長谷川 敬 慶應義塾大学, 文学部(三田), 助教 (90781055)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アルプス山脈 / 帝政ローマ前期 / 峠 / 麓共同体 / 季節労働 / ガリア |
Outline of Annual Research Achievements |
文字史料収集・分析に関しては、2018年度は大・小サン・ベルナール両峠及びモンジュネーヴル峠の麓共同体出身者の墓碑史料の収集を実施し、ほぼ完了することが出来た。また、特筆すべき点としては、下記の現地調査の際に大サン・ベルナール峠通行者の奉納碑文を現地で検分出来たことが挙げられる。それによって、各碑文(金属板)の形状や文字の特徴を直接目視で確認することが可能となり、形状や字体のばらつきから奉納者が峠付近の同一工房で碑文を加工・入手したのではなく各自事前に碑文を用意していた可能性が示唆された。考古学史料の面でも、オート・サヴォワ県とサヴォワ県の発掘成果概要を入手し、次年度からの本格的な分析の下準備を整えることが出来た。一方、現地調査に関しては、当初計画通り2018年8月にスイス、フランス両国で調査を実施した。具体的には、大サン・ベルナール峠とその北麓都市マルティニ(Martigny、スイス・ヴァレ州)、マルティニに対応する近隣都市・村落としてローザンヌとスイス高原のアヴァンシュ(Avenches ヘルウェティ族首邑)の各地を訪問し、考古学博物館にて碑文史料の実地検分を行った。加えて、本研究課題では峠麓共同体出身者が他地域で季節労働に従事した可能性を仮説として想定しているが、それに関係する可能性がある遺物として土器等の手工業製品の検分も合わせて行った。これらの調査の後には、小サン・ベルナール峠にも足を延ばし、峠に残る宿泊施設跡や街道跡の実地検分を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
収集した碑文史料の分析では作業のペースがやや遅かったものの、文字史料ならびに考古学史料の収集では当初計画通りの順調な進捗が得られており、現地調査においては期待以上の成果を得ることが出来た。以上の状況から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、当初計画よりやや遅れ気味である碑文史料分析を集中的に実施し、遅延を解消する考えである。一方、ローザンヌ大学で5月13日~15日の期間に開催される国際学会「アルプス山脈におけるローマ人―歴史学、考古学、碑文学―」は、本研究課題と問題意識を共有する稀有なイベントであり極めて貴重な機会であることから全日程で参加する予定である。それによって、数年先となることが予想される同学会の報告集の刊行を待つことなく、新史料の知見ならびに最新の研究成果を本研究に反映させることが可能となり、本研究の円滑な遂行に資するのみならず研究成果の持つ意義自体を高めることが期待される。
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