2019 Fiscal Year Research-status Report
New angle on the Alpine passes in Roman times: influence of "closed passes" upon local societies under the Principate
Project/Area Number |
18K12540
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
長谷川 敬 慶應義塾大学, 文学部(三田), 助教 (90781055)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アルプス山脈 / 峠 / 季節労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度における本研究の成果としては、前年度までに収集した碑文史料の読解と、スイスで開催された国際学会での最新研究に関する情報収集が挙げられる。碑文史料読解については、小サン・ベルナール峠のフランス(ガリア)側麓集落にあたるエム周辺の住民墓碑を中心に検討を行ったが、現時点では他地域には見られない特異点等は確認出来ていない。これと並行して、エム地域の都市公職者についても碑文史料の情報収集ならびに残存状況を調査したが、これについても今のところ特筆すべき特徴を看取するには至っていない。また、事前計画には含まれていなかったものの、アルプス山脈のイタリア側麓集落についても検討対象に加えることとし、早速関連する碑文史料の情報収集を行った。これは、フランス(ガリア)側の峠麓住民が、フランス側の平野部のみならず峠を越えたイタリア側にも季節労働のために移動していた可能性を新たに考慮に入れたためである。一方、スイス・ローザンヌ大学にて5月13日~15日に開催された国際学会「アルプス山脈におけるローマ人―歴史学、考古学、碑文学―」には、スイス、イタリアをはじめとする各国の著名研究者が集い最新の研究成果が報告されたが、これに参加することが出来たのは最新の知見を得る上で非常に有意義であった。とりわけイタリア側の山麓における人の移動に関する報告は本研究にとって極めて示唆的であった。また、同学会に参加後、パリにて考古学史料に関する情報収集を行えたことも有益であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば、冬期間のアルプス峠ならびに山麓地域の実地調査を2020年3月に行う予定であったが、現地及び日本国内での新型コロナウイルス感染症の流行を受けその実施を見送ったために研究計画にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
目下の情勢では、今回実施を見送った冬期間の現地調査を2020年度中に行うことは極めて困難であると見られることからこれを断念し、冬期間の峠・山麓の状況については先行研究の成果に依拠することとする。そして、国内で実施可能な碑文史料の読解等を集中的に行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行によって、2020年3月に実施予定であった冬期間の峠・山麓地域の現地調査が行えなかったために、旅費ならびに現地購入予定であった書籍等の物品費に充当する金額が未使用となった。2020年度も現地調査実施は困難と見られることから、現地調査未了を先行研究の成果参照で補うべく次年度使用額は書籍購入に充てる予定である。
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