• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2018 Fiscal Year Research-status Report

キクラデス諸島の社会的ネットワーク再編による国民国家建設

Research Project

Project/Area Number 18K12547
Research InstitutionKochi National College of Technology

Principal Investigator

松浦 真衣子  高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (40737235)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords国家宗教と地域宗教 / 宗教マイノリティ / キクラデス諸島のカトリック / 聞き取り調査
Outline of Annual Research Achievements

平成30年度は、キクラデス諸島の島民の18世紀、19世紀の海運ネットワークならびに地域信仰の状況を調べることを目的として現地調査を行った。そして、島の地域信仰が新生国家ギリシャの国家教会と対峙する中で、人々がどのように自らの帰属性を表現・再編していくのか解明する史料を調査した。
第一に、アンドロス島のカイリス図書館を訪問し、アンドロス島民の遺言状や海運業者の史料を閲覧した。アンドロス島でギリシャ独立後に起こったカイリス事件は啓蒙知識人が新宗教を開いて異端裁判にかけられた事件である。この新宗教と地域信仰との関わりを、収集した資料から今後読み取っていきたい。
第二に、ティノス島のエヴァンゲリストリア教会を訪問した。ここにはギリシャ独立戦争の最中に発掘され、その後、国家宗教の巡礼の中心となった奇跡のマリア像が安置されている。今回の調査では教会の関係者、並びに宗教的マイノリティとして島に暮らすカトリック住民に聞き取りを行った。この調査の中で、現在、カトリック島民は正教島民と経済的にも宗教儀礼的にも混ざり合いながら生活していることが分かった。さらに、ティノス島のカトリックの史料を集めた文書館の情報も入手した。次の年度はこの文書館で史料収集を行い、カトリック/地域宗教としての正教、ならびにカトリック/国家宗教としての正教、両者の関係を整理し、ティノス島のカトリック住民のアイデンティティがギリシャ独立後どのように変わっていくのか調査を進めたい。
第三に、シロス島の国立文書館では、19世紀初期の教会文書を閲覧した。その中で、シロス島のカトリック教徒に関する史料をいくつか発見した。また、ギリシャ独立戦争の最中、島のカトリック教会が新しくイコンを創作していたことも分かった。収集した史料をもとに、シロス島のカトリック教徒のギリシャ独立前後での経済・アイデンティティの変化を分析していきたい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成30年度は初年度ということもあり、現地調査を行い、キクラデス諸島の地域経済や住民構成などを調べることに専念した。結果、ヴェネチア・オスマン帝国支配期に海運で多くのカトリックの家系が活躍していたことが分かった。そして、現在でもキクラデス諸島にはかなりの数のカトリックが住んでいる(ティノス島の約4割の村は今でもカトリックの村として知られている)。19世紀初め、カトリック住民を多く含むキクラデス諸島が国家宗教に対峙していく中で、正教住民とカトリック住民の関係がどのように変化していったのかを今後調査していきたい。

Strategy for Future Research Activity

今後は平成30年度に収集した史料をもとに、アンドロス島の18世紀から19世紀の経済や地域信仰の状況を調査し、カイリス事件で発生した新宗教と地域社会のかかわりを明らかにしたい。そして、島民が新しい国民国家の中で、新宗教にどのような役割を期待したのかを解明したい。
また、ティノス島、シロス島、さらにナクソス島にはかなりのカトリックが今でも居住し、ヴェネティア・オスマン帝国時代には島の社会階層の上位を占めていたことが分かった。このようなカトリックの島々が正教を国家宗教とするギリシャに編入される中で、地域住民の意識や経済がどのように変わっていったのかを調査していきたい。

Causes of Carryover

平成30年度は、校務の関係で十分な旅行調査期間をとることができなかった。そのため旅行費用に充てるはずだった86,698円が余ってしまったので、次年度の調査にこの費用を当てたい。

URL: 

Published: 2019-12-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi