2021 Fiscal Year Research-status Report
キクラデス諸島の社会的ネットワーク再編による国民国家建設
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18K12547
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
松浦 真衣子 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (40737235)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 宗教マイノリティの国民化 / 聖母像の国民化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、コロナウィルス感染症の影響で、現地調査を実施することが出来なかった。その為、これまでに収集したキクラデス諸島関連の資料をまとめた。またネット上でアクセスできる19世紀から20世紀の国勢調査を使用して、キクラデス諸島の社会構成の移り変わりを明らかにした。これらの情報をまとめ、東ヨーロッパ史の研究者と勉強会などを開き、意見交換を行うなどをおこなった。 今年度の研究で重点を置いたのは、キクラデス諸島全般で見られる聖母信仰の国民化と宗教的マイノリティのリアクションである。1928年の国勢調査を参照すると、諸島のローマカトリック教徒はギリシャ独立以来人口の0.5%以上1%未満で推移している。また、ローマカトリック人口の約97%がギリシャ語話者であり、識字率も職業も正教徒とほぼ変わらないことが分かった。 19世紀にギリシャで国民国家建設が始まると、諸島で土着化していた聖母信仰が圧倒的多数を占める正教徒によって国民のシンボルに再編されていった。ティノス島では奇跡を起こす聖母像が発見されて以来、島そのものが国民の巡礼地へと変わっていった。他方で、聖母信仰は近代化へのカウンターとしても作用した。ナクソス島でも正教徒によって聖母像が発見されたが、この動きは土地の国有化に対する抗議行動の一形態となっていった。 19世紀以降、正教徒の間で国民化とそれへの反抗の中で、聖母のシンボルが頻繁に書き換えられていったが、ティノス島のカトリックコミュニティにも18世紀以降、聖母を中心とした巡礼地が誕生し、今なお発展を続けている。今後は、ティノス島の聖母表象から、宗教的マイノリティの国民意識の形成を分析していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナウィルス感染症拡大のため、当初予定していた現地調査ができない、書籍の購入に時間がかかるなどのトラブルがあった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は現地に赴き、聞き取り調査を行いながら宗教マイノリティ・マジョリティ双方の聖母像の変遷を分析していく。その際、同時並行で進めている言語的マイノリティ・ヴラーフとキクラデス諸島のローマカトリックとを比較しながら、ギリシャ国家のマイノリティの同化政策の展開も明確にしていく。
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Causes of Carryover |
2021年度もコロナウィルス感染症拡大により、現地調査や書籍購入が困難だった。2022年度は海外渡航も落ち着くと予想されるので、現地調査を行い文献収集、聞き取りに取り組む。
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Research Products
(1 results)