2018 Fiscal Year Research-status Report
Archaeological researches on the end of Angkor dynasty and transformation of ceramic demands
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18K12561
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
佐藤 由似 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 専門職 (70789734)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アンコール王朝末期 / ロンヴェーク / スレイ・サントー / 陶磁器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究に於て初年度である2018年度には、当初より計画をしていた、①アンコール王朝末期に位置づけられるアンコール・トム内の西トップ遺跡出土陶磁器に関しての調書作成、②ロンヴェークにおける遺構・遺物調査、③スレイ・サントーにおける現地での遺構・遺物分布調査をそれぞれおこなった。 ①の西トップ遺跡出土陶磁器に関しては、インヴェントリー作成のほぼ最終段階に達することができた。 ②のロンヴェークにおいては、当初想定していたよりも大きな成果をあげることができた。 現地での遺物採集調査により、量・質ともに高い輸入陶磁器の出土を確認したのである。とりわけ注目に値するのが、中国南部で生産された華南三彩陶器で、このうち1点は比較的大型の壺の破片であった。これは、日本では16世紀の豊後府内遺跡などで出土する先例がある。その他にも豊富な明代の景徳鎮青花を筆頭に、華南三彩、褐釉陶器、東南アジア陶器も多く、タイのメナム・ノイやシーサッチャナライ産黒褐釉陶器、シーサッチャナライ産青磁、鉄絵、少量のベトナム褐釉陶器など多種多様な遺物が出土している。また、在地のクメール黒褐釉陶器も一定量出土しており、アンコールの終焉と共に陶器生産も終了すると唱えられていたフランス人研究者らによる学説は、否定せざるを得ない結果となった。 これまでのところ、東南アジア産陶器に関しては在地のクメール陶器を除き、最も多いのがタイ産陶器である。ロンヴェーク政権はアユタヤと政治的対立を続けていたにもかかわらず、出土遺物から見る限りは相当量の交易をおこなっていたことが垣間見られる結果となった。 ③のスレイ・サントーに関しては一切考古学的先行研究がなく、アンコール滅亡直後の王都とされていることから、その遺物組成が重要視されるところで、今回の調査では遺構が広範囲に点在すること、遺物の年代幅が広いことが判明し、引き続き慎重に調査する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題については、現在までのところ比較的順調に進めることができている。アンコールに関する調書作成がほぼ予定通りに終了する見込みである。 ロンヴェークでは相当量の遺物量を確認したが、当初予定内に輸入陶磁器分は終了することができるととみられる。 スレイ・サントーに関しては、想定より広い範囲に遺物が分布していることが判明したため、引き続き現地調査をおこない、基礎資料作成へと移行する予定である。 おおむね予定通りのペースで研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はの研究推進方針としては、2019年度にスレイ・サントーにおける現地調査を進め、基礎資料作成へと段階を進めたいと考える。加えて、ロンヴェークの資料をまとめる作業をおこなうため、現地に3回は渡航することになると考える。 カンボジアの乾季に現地調査を進めることとなるため、雨季の期間中に国内における資料調査やパソコン上でのデータ整理などを進展させ、円滑な研究推進を心がける。
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