2019 Fiscal Year Research-status Report
Archaeological researches on the end of Angkor dynasty and transformation of ceramic demands
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18K12561
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
佐藤 由似 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 専門職 (70789734)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ポスト・アンコール / スレイ・サントー / ロンヴェーク / クメール陶器 / 明 / 中国陶磁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はカンボジア中でも衰退の時代と考えられてきたアンコール王朝末期からポスト・アンコール期にかけての王都出土遺物の調査をもとに、当時の社会・経済・宗教的変容について検討を試みるものである。2年目にあたる本年度は、15~16世紀の王都スレイ・サントーの現地調査を主軸におこなった。 カンボジア王朝年代記によれば、15世紀中頃、それまで栄華を極めたアンコール王朝は終焉を迎え、クメールの王はスレイ・サントーのバサンに逃げのびたとされる。しかしながら、カンボジア王朝年代記は19世紀になって編纂された年代記であり、資料としての信憑性に関しては先行研究においても疑義を唱えられているところであった。 さらに、現在スレイ・サントー地域にはバサンと呼ばれる地が、2か所存在しており、果たしてどこに王が住まわったのか、これまで考古学・建築学的にも実証的な調査が行われたことはなかった。 5月に、まずバサンの丘という地名が残るプラサート・プレア・ティエット・バライにおいて聞き取り調査ならびに考古学調査をおこなった。現在、出土遺物は整理作業中ではあるが、アンコール期のクメール陶器・土器を中心に14世紀ごろの中国陶磁を多く確認した。ポスト・アンコール期に位置付けられる16世紀以降の中国陶磁器はごく少数に過ぎず、当地域はアンコール期に活動の中心があったものと推察される。前年度までに調査を進めていた16世紀の王都ロンヴェークとは陶磁器の出土様相が異なることを確認する事が出来た。 同時代史料として、明には柬埔寨からの朝貢記録が残されており、14世紀に「巴山(バサン)」王からの朝貢がおこなわれたとされる。今後、もう1つのバサンの地の調査を進め、多角的な視点からスレイ・サントー地域を理解することが必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度までの段階では、おおむね当初の計画通りに研究を進める事が出来ている。初年度にロンヴェークの調査、2年目にスレイ・サントーの現地調査をおこなう事ができた。ただし、本来は2年目である令和元年度に予定していた渡航が1回分がコロナ禍の影響でキャンセルをせざるを得なかった。そのため、先んじて文献史料の調査を進めることにより、最終年度である令和2年度での研究に影響が出ないよう調整をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和2年度は、昨今のコロナ禍の影響で、いつカンボジア現地調査が出来るのか先が見えない状況である。事態によっては、年度末間際まで調査研究をせざるを得ない状況が発生する可能性もある。現地カンボジアも5月現在、外国人が渡航する事が困難であるため、今後の事態の推移を注視し、現地調査時期等を調整する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度末に発生したコロナ禍の影響で、次年度に購入を予定していた書籍等を本年度末に購入したが、35円という繰越額が生じた。しかしながら100円以下のわずかな金額であり、次年度の計画には大きな変更はもたらさない。
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