2019 Fiscal Year Research-status Report
Anthropological research on musical improvisation and the embodiment of Afro-Creoles in Cabo Verde
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18K12606
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
青木 敬 関西大学, 文学部, 助教 (60791217)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歌謡モルナ / 無形文化遺産 / ソダーデを表象する身体行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、環大西洋奴隷貿易以来、白人と黒人の混血であるアフロ・クレオールの文化的営みによって発展してきた音楽に表現される身体行為の役割と、カーボヴェルデにおけるアフロ・クレオール社会の文化的遺産の今日的価値を明らかにすることである。とりわけカーボヴェルデの文化的遺産(歌謡モルナ)の今日的価値を明らかにすることに重点を置いた。 本年度は、約1ヶ月間、カーボヴェルデ北西部サンヴィセンテ島で歌謡モルナの歌詞に表現される概念、ソダーデに関する調査を行った。ソダーデはノスタルジアに近接した意味をもつ概念である。それは大西洋奴隷貿易や劣悪な環境(飢饉や干ばつなど)によって移住を迫られた状況によって生まれた概念である。 現地調査の内容は、歌謡モルナの演奏をとおして表現されるソダーデの身体的行為を民族誌映画の手法をもちいて描くことであった。そのためのデータ(映像制作、インタビュー調査、インフォーマントとの関係構築)を集めることはできたものの、映像制作に必要な詳細なデータを収集するにまだ時間を有する。 2019年12月に歌謡モルナがユネスコ無形文化遺産に登録されたことは本研究を遂行するうえで重要な出来事であった。モルナが無形文化遺産に登録されたことで、政府によるモルナ演奏者たちに対する経済的支援が期待でき、これによってモルナはさらなる変容を遂げている。このような背景のなかで、本研究は無形文化遺産モルナの価値と評価を学術的側面から貢献することができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
民族誌映画を制作するためのデータが必要であるため。そのため、ソダーデが表象する身体的行為の分析にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本研究を継続し、民族誌映画を制作することが必要となる。また、無形文化遺産として登録されたモルナの変容と実態を明らかにする。さらに、ソダーデが表象する身体的行為を共同研究の形で実施する予定である。具体的には、モルナ歌手とともに新しいモルナの楽曲を制作し、これによって島民はモルナの価値をどのように評価し、音楽を再構築していくのかを明らかにする。こういったアーティストとの人類学を基礎とする共同研究を実施することは、現代人類学における多元的世界を示すための重要な事例となると考えている。
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Remarks |
「人類学」と「フィクション」――『あふりこ フィクションの重奏/遍在するアフリカ』(新曜社)刊行記念トークイベント(https://store.tsite.jp/umeda/event/humanities/11717-1220421216.html)
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Research Products
(3 results)