2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K12643
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
羽賀 由利子 金沢大学, 法学系, 准教授 (90709271)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 情報 / 渉外的 / 著作権 |
Outline of Annual Research Achievements |
渉外的な情報の流通の主たる類型の一つとして、情報財としての著作権の渉外的流通に際して生じる問題についての分析を行なった。比較法的考察の対象として欧州を取り上げ、同法域における著作権侵害についての国際裁判管轄及び準拠法の議論を分析した。 国際裁判管轄については、ブリュッセルIa規則を中心として判例法理が発展しており、一般不法行為についてのリーディングケースで示された「損害をもたらす事実が発生した地」は加害行為地と結果発生地のいずれをも含む概念であり、さらにインターネット上の拡散型侵害では結果発生地として「利益の中心」たる被害者の常居所地法が示される。しかし、この議論は著作権侵害には妥当しないことがECJによって示され、属地主義原則により、権利の保護に関する判断はそれぞれの国に委ねられる。準拠法についてはローマII規則により属地主義原則から保護国法が適用されるが、インターネットを介したユビキタス侵害ではその限界を露呈している(以上の内容は2019年度著作権法学会研究大会で報告)。 加えて、デジタル社会のデータ収集から生じる渉外的問題の検討に取り組んだ。国際的な情報流通市場ではデータ収集にかかるプライバシーの問題、購入の意思決定の重要要素の決定プロセスに関する情報の不透明性の問題、消費者間の公平性の問題、等が生じうるが、これらの問題は、個人情報・データ保護法制、消費者保護法制、競争法等、複数の分野に関係する。このうち特に消費者保護について、情報の流通とデータの持ち主の保護のバランスを考慮した立法に取り組むEUを比較対象として、欧州一般データ保護規則(GDPR)及び、欧州の消費者保護政策を勘案して分析を行った(以上の内容は、2019年度国際経済法学会研究大会で報告)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会報告・論稿執筆の依頼の関係から複数の論点について同時並行的に研究を推進することとなり、当初の研究計画より若干の変更が必要となったものの、いずれも情報の国際的流通にかかわるものであり、本研究のテーマにかかわる重要な側面の分析と位置づけられる。この点で、進度としてはおおむね目的を達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
デジタル市場における消費者の権利及び情報の流通における弱者当事者たる消費者の保護について、前年度に行った学会報告に加筆修正を加え、論稿として公表した上で、さらに検討を進める。 加えて、情報の主体としてこれまでは自然人のみが考えられてきたところ、そもそも情報主体となりうる存在についての分析に取り組む。その他の主体として、AIにより創作された著作物を素材として考察を進める。
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Causes of Carryover |
見込んでいた書籍の発売の遅れ、および参加を予定していた学会の日程変更により使用額に若干の変更が生じた。次年度の発売・開催に際して、当該残額を用いる。
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