2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12670
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宇野 瑛人 東北大学, 法学研究科, 准教授 (00734708)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 支払不能 / 支払停止 / 債務超過 / 破産 / 倒産手続 / 否認権 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度においては、倒産手続の開始原因(支払不能)についての比較的規模の大きい論文(5回にわたる連載にかかり、総計で300頁ほどになる)を公表した。これは、研究課題の柱の一つをなすものであり、かつ、他の柱とも密接に関係するという意味において本課題の基盤となる意味を有している。この論文においては、破産手続の開始原因である支払不能をテーマに、その概念が一体どのような事象を識別するために法律上定められているのかを理論的見地から検討した。直接的には破産法に関する議論として記述したものであるが、破産と再建型共通の制度である否認権とも深い関わりを持つものであり、また破産手続に関して理論を詰めることで、再建型手続における隣接概念(支払不能のおそれ、事業継続支障)にも多くの示唆が得られた。実際に、連載の最終回においてこれらの隣接領域についていかなる示唆が得られるかを若干ではあるが検討した。 また、他の小課題との関係においても資料の収集・講読を進めており、債権者平等や破産財団というテーマに移って、次の論文執筆に着手するところである。とりわけ、両者が交錯する問題として、信託や非典型担保の問題があり、ここに焦点を絞りつつある。特に後者は、従前から破産と再建型での扱いが同じなのか異なるのかということに議論の余地が生じていたところであり、本課題との関係でも検討を加える意義が大きそうである。また、当初はあまり予期していなかったが、破産財団にある財産が属するかどうかという問題と、属する財産に優先権がついているかどうかという問題に、一定の連続性があるのではないかという知見、つまり小課題として元々はバラバラに設定した2つの問題の相互関係を考える方向性に魅力を覚えるに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の中で小課題として設定したものの内一つについて、一定規模の成果を公表することができた。一応、3つの内1つということではあるが、この小課題は他の課題との関係で基礎的な意味を有する点でひときわ重要性が高い。その意味で、この課題についての成果が公表されたことは、研究の進捗が比較的良好であることを意味すると考えられる。また、他の小課題についても、既に着手し、資料の収集等を進めている段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、公表した論稿をさらに深化(とりわけ、細かな実定法解釈論の展開は十分になしえていない)するとともに、研究課題において設定した他の小課題に取り組むことを予定している。また、昨今の状況からすると事態は流動的であるとはいえ、近く在外研究の機会を持つことを予定しており、外国資料の閲読のみならず、実際に現地での制度調査を行うという角度からも研究を発展させることを予定している。
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Causes of Carryover |
若手研究者に関する独立基盤整備支援にかかる助成金が未執行のまま繰り越される。当該助成金については、①元々研究期間を通じて漸次的に使用していくことを予定しており、②科研費と並んで所属研究機関からの助成を受ける形になっており研究代表者の方針として管理の便宜上まずこちらを先に執行することとしている。そのため、後順位となった科研費からの支援分については、繰り越されており、これは今年度及び来年度にわたって利用される予定である。
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