2022 Fiscal Year Research-status Report
「動態的な著作権の制限規定」のすすめ~オーストラリア著作権法からの示唆
Project/Area Number |
18K12691
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐藤 豊 山形大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40528270)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 著作権の制限 / 制限が妥当する利用の類型 / 著作物の利用の対価 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、当初計画にあった本研究のまとめの作業を継続した。 その過程で、本研究が豪州著作権法を範として提唱する、「動態的な著作権の制限」が適合する著作物の利用の類型が明らかとなった。 すなわち、(1)著作物の利用者に対価を支払わせることがそもそも許されない利用(例:障害者が著作物を享受するための利用。利用の対価を利用者(障害者)に課すことは、著作物を享受するために障害による困難のない者に比して高い費用を求めることとなり、障害者差別となる。)、(2)著作物の利用者に対価を支払わせることが、そもそも許されないわけではないものの、対価を高額に設定すれば利用が妨げられ、その結果として、教育や研究の推進などの他の法益を害することになる等の事情により、実際には収益を期待できない利用、(3)著作物の利用者に対価を支払わせること自体には阻害要因がないものの、利用行為が日常的に多数生じる等の理由で、個別の利用ごとに逐一利用の対価の決定をしようとしても、取引費用が許容範囲を超える結果、市場の失敗を招来する利用(例:動画投稿サイト、サブスクリプションサービス)、(4)著作物の利用者に対価を支払わせることに何の阻害要因もなく、利用行為が日常的に多数生じるわけではないため、権利制限の必要のない利用に著作物の利用を類型化した。 そのうえで、少なくとも(1)と(2)については、「動態的な著作権の制限」が妥当することを導き出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度に生じたコロナ禍による大幅な研究計画の後れが令和3年度及び令和4年度に波及した。 本務校では本研究に関するオンラインデータベースへのアクセスはほとんど提供されておらず、当初計画で想定していた国内出張等による関連文献の収集について、令和3年度においても制約が存在していた。 さらに、令和4年度に急速に進行した円安等の影響により航空運賃及び宿泊費が一泊4万円以上まで高騰し、当初計画にあった外国出張については、予算不足及び山形大学の旅費規程(最高で一泊2万円弱)では必要な宿泊費を支出できなかったため断念を余儀なくされた。 これらの理由により、研究の進行が遅延している。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画の予算では外国出張が不可能な状態が継続しているため、国内で収集可能な範囲の資料で研究を遂行し、取りまとめることを計画している。 具体的には、令和5年度は、「動態的な著作権の制限」が適用する著作物の利用の類型の整理を深化させ、本研究の取りまとめとする予定である。
|
Causes of Carryover |
令和4年度に急速に進行した円安等の影響により航空運賃及び宿泊費が一泊4万円以上まで高騰し、当初計画にあった外国出張については、予算不足及び山形大学の旅費規程(最高で一泊2万円弱)では必要な宿泊費を支出できなかったため断念を余儀なくされた。 令和5年度は、可能であれば他の予算との組み合わせによる外国出張、不可能な場合は外国出張に代えて本研究の取りまとめに必要な文献の収集等に使用額を充てることを計画している。
|