2021 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Verification of "household unit model" bias towards local policy implementation
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18K12700
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
荒見 玲子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (20610330)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 世帯主義 / 行政サービスの配送 / 第一線職員 / ジェンダー / 組織理論 / 住民制度 / コンジョイント実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は研究計画の4年目で、研究成果を仕上げるはずだったが2020年度から続く新型コロナウィルス感染症により実証研究が不可能になってしまい(保健、教育、貧困等政策分野として最も大きな影響を受ける領域を占めている)、科研申請時の研究計画に基づいた調査研究を進めることはできなかった。研究期間の延長を行いつつ、コロナ禍が2年続いたと、今後の状況がはっきりしないこと、現在の状況で無理やりオンラインサーベイ等をしても結果にバイアスが生じたり、回収率が十分でないなど良質なデータがとれないこと、このままでは研究を仕上げることが難しいため、方針転換を行い、市民サーベイや第一線職員へ実験研究を今回の科研では断念した。そのかわりに、第一に、これまで行ってきたインタビュー調査を生かして、資料の分析や2次資料の検討を行った。具体的には既存研究及び過去の政策資料を検討しながら、世帯単位の制度が選択される経緯の検討を始めた、まだ分析途中ではあるものの、当初の研究計画では視野に入っていなかった住民制度との関係で興味深い発見ができた。第二に、聞き取りはできなかった本研究で対象としていた、教育・保健・貧困対策分野におけるコロナ禍対応、コロナ禍の影響にかかわるデータ、資料等を検討し(新聞報道、生活福祉基金の貸付にかかわる資料など)「政策の配送」の観点から、行政の実践による「世帯主義」の影響がどのように支援を必要としている人に生じているのか、どのようなメカニズムで影響が生じるのかについて明らかにした論文を執筆した。コロナ禍の影響という特殊な状況下ではあるが、本科研の目的を達成するに十分な考察はできたと考えられる。それ以外にコロナ禍の前に進めていた自治体幹部職員への聞き取り調査や組織理論のレビュー研究、過去に実施したコンジョイント実験の研究成果など本研究の理論枠組の基礎となる研究の成果を公表できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも記載した通り、2020年度から続く新型コロナウィルス感染症により実証研究が不可能になってしまい(保健、教育、貧困等政策分野として現場職員が最も大きな影響を受ける領域を占めている)、科研申請時の研究計画に基づいた調査研究を進めることはできなかった。研究期間の延長を行いつつ、コロナ禍が2年続いたと、今後の状況がはっきりしないこと、現在の状況で無理やりオンラインサーベイ等をしても結果にバイアスが生じたり、回収率が十分でないなど良質なデータがとれないことなどから研究費の無駄遣いをしないために研究方法を資料調査、文献調査に研究手法を切り替え、研究対象をコロナ禍の影響に限定した。この点では当初の計画から大幅に遅れている、といえるが、方針転換の結果、ジェンダーと福祉国家の視点や、既存研究が拘束されている戸籍や番号制度の視点とは異なる住民制度の観点から研究を進めることができた。これは政策実施を中心に設計していた本来の研究計画より理論的に深化したと評価できる。また、既存資料で光が当たっていないものも多くあることが発見でき、その意味で研究は進展したといえる。以上を総合すると、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は最終年度として、第一に、昨年度始めた世帯主義が政策に組み込まれた原因を探る資料調査を進めつつ、これまでの研究成果をまとめる作業に集中する予定である。第二に、日本の住民制度に関心を持っている留学生の指導が始まることもあり、国際比較の観点から、改めて資料調査からわかったことを位置付けたい。第三に、過去に収集したデータ等を改めて精査し、今年度中に世帯に関する論文を一本と関連する大きな業績を最低1つは仕上げる予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度から2年間続く、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、研究計画にあり、経費(旅費・人件費・その他)の使用予定であったインタビュー調査やアンケート調査の実施が不可能だったため、それらの調査に使用だった旅費・人件費等が大幅に未使用で残った。研究実績に書いた通り、不本意ながらも研究計画を変更し、資料調査に切り替え、書籍や資料の収集等については、研究費は使用しているため、物品費が倍増しつつ、前年度未使用額とほぼ同等の金額が残っている。2022年度は、資料調査の継続とこれまで収集したデータの分析の際にかかる費用に研究費を使用するため、引き続き物品費の割合が大幅に増え、人件費の使用は大幅に減少すると予想できる。
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Research Products
(11 results)