2018 Fiscal Year Research-status Report
中国における権威主義体制化の手段としての人民代表大会:権力と正統性をめぐって
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18K12711
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
杜崎 群傑 中央大学, 経済学部, 准教授 (30631501)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国共産党 / 政治協商会議 / 人民代表会議 / 人民代表大会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1950年代の中国における「立法‐司法‐行政」のうち、中国共産党によって正統性調達と権威主義体制構築に利用されてきた立法権=人民代表大会に着目し、一次史料と政治学理論の双方を用い、さらに国際的要因も含めて検討することにより、従来ほとんど明らかにされなかった、当時の中国における三権分立と党の関係、これによって導き出される政治体制と、共産党による「党国体制」=独裁化の実態、およびそのための具体的手段を、人民代表大会の開催過程から検討するものである。 本研究は主に①史料の収集・整理と、②政治学理論と先行研究の精読を行いつつ、③一定の史料収集が達成できた分野から順次論考を発表することが予定されていた。①については、2018年度中に1954年の憲法制定過程に関する史料を収集することができた。また、科研費は用いていないものの、オーストラリア国立図書館にて、陝甘寧辺区参議会に関連する資料を収集した。その他にも1950年代の政治史に関わる膨大な資料を収集しており、人民代表大会史の資料について確固たる基盤を築きつつある。②については主に選挙権威主義に関連した研究を精読した。③については、①にて言及した陝甘寧辺区参議会に関連した資料を用い、同参議会に関する論考を現在執筆中である。また、史学会からの要請で2017年度執筆された論文について傾向をまとめた[共著]小野泰教・杜崎群傑「2017年の歴史学会――回顧と展望(中国近現代)」(『史学雑誌』第127編第5号、2018年5月)、および歴史学研究会から要請された歴史的視点から第13期全国人民代表大会を検討したもの(「歴史的視点から見た中国共産党第19回全国代表大会・第13期全国人民代表大会」『歴史学研究』第975号、2018年10月、27-32、66頁)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、中国の史料収集の環境は悪化の一途を辿っている。本研究との関連で言えば、以前から外交部档案館や地方档案館の公開制限の話は出ていたが、2018年度はこれに加えて北京大学図書館を訪問し、1954年憲法作成に関する史料を収集しようとしていたところ、図書館から訪館を断られるということもあった。とはいえ、必ずしも悲観する状況にはなく、申請者は国内や中国近郊の地域に所蔵する資料、さらには中国ですでに公刊されている資料を解析しつつ、政治学理論を応用しながら検証を行うこととした。その中で、河北の実情を知る上では有力な『河北日報』を入手できたことや、オーストラリア国立図書館に所蔵されている『中共重要歴史文献資料彙編』という膨大な資料群にアクセスできたことは今後の研究にとっても大いに有用である。また、申請者の研究ネットワークにより、1954年憲法制定過程に関する史料、陝甘寧辺区参議会開催過程に関する史料をすでに入手している。その上でこれらの史料を用いた研究にすでに着手しており、かかる意味では本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように昨今の政治情勢の中、史料収集に関する制約は大きいが、幸いなことに、申請者には本年度までに筆者が収集してきた一次史料、上記の通り2018年度において収集した史料がある。そこで今後はこれらの史料を駆使しつつ、政治学理論を応用し、実証的に研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
科研費は主に書籍や史料の購入にあてていたが、差額が発生してしまった。この差額(3657円)ではなかなか購入できる専門書も少ないため、次年度に繰り越し、専門書の購入費用等にあてることとした。
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