2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18K12720
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
毛利 亜樹 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00580755)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国連海洋法条約 / 領域認識 / 法の支配 / 海洋秩序 / 国際地位をめぐる対立 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の2022年4月に、2020年10月からの産休・育休での研究の一時中断から復帰し、研究を再開した。最終年度は研究成果の投稿に注力するとともに、研究成果を用いた更なる研究機会の獲得を目指した。 第1に、2つの学会誌への関連論文の投稿を試み、最終的に関連論考がアジア政経学会の『アジア研究』に研究ノートとして採択された。中国側の海洋における領域認識の形成過程を論じた当該論考は、海洋における日中の軋轢の背景となる中国側の国内事情を明らかにしている。当該論考は、1982年の国連海洋条約の採択から発効までの中国政府における海洋領域認識の形成に焦点を絞ったものであり、当該認識に基づく多国間外交の場での中国側の行動までは射程に入れることはできていない。しかし、海洋における中国側の国際的振る舞いの前提を明らかにする当該原稿は、本研究の一部を構成している。 もう1つの投稿論文は引き続き準備中である。2012年以降の安倍政権下の日本が、尖閣諸島領有に対する中国の挑戦を「法の支配」への挑戦というグローバルな課題へ転化してきたのかを、南シナ海問題への関与を検討することで位置付けてきた過程を扱う。戦略的対立の理論をいかに活用するかという点で検討を重ねている。 第2に、日中の国際地位をめぐる対立のうち、中国側に焦点を当てたプロポーザルによって、ハーバード大学イェンチン研究所の客員研究員プログラムの一次選考を通過した。残念ながら二次専攻を突破することはできなかったが、一次選考の通過や2次専攻の内容はプロポーザルが一定の水準を満たすことを示唆していると考えられる。引き続き、より明確な議論を磨き上げ、研究成果の公開に向けて努力を行なっていく。また、日本の「自由で開かれたインド太平洋」に関する国際会議で、法の支配を共通の利益として定着させようとする日本外交の試みについて報告した。
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