2019 Fiscal Year Research-status Report
「保護する責任」規範の実施を規定する要因の解明―事例間相互作用に着目して
Project/Area Number |
18K12724
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
政所 大輔 早稲田大学, 政治経済学術院, 日本学術振興会特別研究員 (30734264)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 保護する責任 / 国際連合 / 安全保障理事会 / 規範 / コンストラクティビズム / リビア危機 / シリア危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当該研究プロジェクトの第二年度であり、初年度に構築したプロジェクト全体の理論枠組みを学会報告などを通じて精緻化し、あわせて事例研究を行うとともに、国内外でインタビュー調査と資料調査を実施する予定で研究を進めた。 本年度の研究実績としては、第一に、初年度に構築した基礎的な理論枠組みを精緻化した。具体的には、2019年10月に新潟で開催された、日本国際政治学会2019年度研究大会において、「マルティラテラリズムは今もなお重要か―コンストラクティビズムの視点から」と題する報告を行い、討論者や参加者との議論から得たコメントを枠組みの精緻化に活用した。また、同時期、『保護する責任―変容する主権と人道の国際規範』という単著の執筆を行っていたが、この作業を通じて国際規範の実施について理論的な検討を行ったことも当該枠組みの精緻化に役立った。 第二に、この理論枠組みを用いて事例研究を行った論文を執筆した。内容としては、国連安保理の意思決定に関して、①当事国の発言・意図、②採択された決議の文言、③実際に決定された措置の観点から規範の実施を分析したものである。この論文については、2020年3月に米国ハワイで開催される予定であった、International Studies Associationの年次大会で報告することが決まっていたが、新型コロナウイルスの影響により大会自体が中止となってしまった。理論枠組みの精緻化や事例研究を進める過程では、米国ニューヨークや神戸、京都、東京などでインタビュー調査と資料調査を行った。国連職員や日本の国連代表部職員、NGO関係者などが調査に応じてくれた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、2020年3月にハワイで開催されることになっていた、International Studies Associationの年次大会で報告することが決まっていたが、新型コロナウイルスの影響により大会が中止となってしまった。同大会でのフィードバックをもとに研究を進展させる計画でプロジェクトを進めてきたため、大きな影響を被った。また、この時期に開催予定であった他の研究会なども軒並み中止となってしまったため、上記の大会に代わる報告の機会を見つけることができなかった。他方、報告用の論文は執筆しているため、研究が進んでいることは確かである。したがって、全体としては「やや遅れている」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度前半の学会や研究会の多くが中止となり、当分の間は研究報告を行う機会が見当たらない状態となっている。2021年4月に開催予定のInternational Studies Associationの年次大会(米国ラスベガス)には報告の申し込みをしたが、採択されたとしても年度をまたぐため、本研究プロジェクトにおける報告の機会として位置づけることができるのか定かでない。また、追加の調査を米国ニューヨークで行いたいと考えているが、いつ渡米することができるようになるのか見通しが立っていない。インタビュー調査に関してはZoomなどのウェブ会議システムを使うことができるかもしれないが、資料調査には限界があると思われる。いつ渡米することが可能になっても対応できるように、インタビュー対象者や必要な資料の見当をつけて整理しておく。 また、「研究実績の概要」で言及した単著は2020年1月に公刊されたが、2011年のリビア危機とシリア危機における保護する責任の規範の実施についても分析している。幅広い研究者から同書へコメントをもらう予定であり、本研究プロジェクトの理論枠組みの精緻化とプロジェクト全体の進展に繋げる。
|
Causes of Carryover |
国際学会に参加するための旅費および滞在費を確保していたが、前記の理由により参加することができなくなったため。 次年度使用額については、国際学会への参加費と海外研究調査の費用として使うことを考えている。
|
Research Products
(3 results)