2018 Fiscal Year Research-status Report
鈴木九萬日記と関係資料を用いた戦前・戦後の日本外交史研究
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18K12732
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
矢嶋 光 名城大学, 法学部, 准教授 (30738571)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本政治外交史 / 連盟外交 / 連盟派 / 占領期 / 戦後 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前は連盟外交に携わり、戦後には終戦連絡地方事務局連絡官・横浜事務局長とその後継に当たる横浜連絡調整事務局長を務めた鈴木九萬の日記と関係資料を用いて、戦前・戦後の日本外交のありようを検討することを目的としている。 この目的を達成するために、平成30年度は、鈴木の日記および関係資料の収集をおこなった。具体的には、9月に鈴木の母方の実家に当たる倉田家にて資料調査と聞き取り調査をおこなった。この調査にもとづいて整理した日記および写真資料については、保存と公開の観点から専門家による写真撮影をおこない、デジタル化の作業を進めた。また、11月には鈴木の母校である茨城県立太田第一高等学校(旧制太田中学校)を訪問し、校友会誌や記念誌などを中心に資料調査をおこなった。さらに、3月には英国国立公文書館にて講和・独立期の日本外交に関して、とくに1950年6月の第5回ユネスコ総会にオブザーバーとして参加し、欧米各国を歴訪した鈴木の動向を重ね合わせながら、資料調査をおこなった。 このほか、平成30年度の成果としては、論説「外務省連盟派とその政策」を本務校の紀要に執筆したことがあげられる。同論説は、外交官のキャリアパスから戦前における外務省内の政策派閥のありようを再検討したもので、これによって、これまで十分に捉えられてこなかった連盟外交に積極的な在欧外交官グループ(連盟派)の存在を明らかにすることができた。また、ここから鈴木が連盟派の外交官であったことが判明し、現在進めている鈴木の日記や関係資料から彼の活動を跡づけることができれば、戦前から戦後にわたる連盟派の活動の一端を解明することにつながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画のなかでは平成31年度におこなう予定であった鈴木九萬の日記をデジタル化する作業を30年度に終えられたことは、計画以上の進展といえる。しかしその一方で、諸事情により30年度におこなう予定であった鈴木のご息女への聞き取り調査をおこなうことができず、その結果として、そのほかの親族宅への資料調査および聞き取り調査もおこなうことができなかったことは、計画よりも遅れているといわざるを得ない。これらの点を総合的に勘案して、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、第一に平成30年度におこなう予定であった鈴木のご息女に対する聞き取り調査を実施し、これに合わせてそのほかの親族宅への資料調査および聞き取り調査をおこなうこと、第二に鈴木の日記の解読を進めること、があげられる。また、日記の解読に合わせて、必要が生じた場合には米国国立公文書館および英国国立公文書館において資料調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
資料のデジタル化に関する費用について、納品されるまでは正確な金額がわからず、経費の執行に当たってある程度余裕を持たせる必要があったため、最終的な使用金額に余りが生じた。今回生じた金額は、次年度における資料調査の複写費用などに利用する予定である。
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Research Products
(4 results)