政府間の出向制度による効率的な人材配置に関する研究

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K12806
• Research Institution: Kansai University
• Principal Investigator: 小嶋 健太 関西大学, 経済学部, 助教 (00634247)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 政府間関係 / 出向 / 人材配置 / 内部労働市場

Outline of Annual Research Achievements

本研究は，中央・地方政府間出向制度の人事政策としての側面に焦点を当て，この制度が公的部門における効率的な人材の配置に与える影響を解明することを目的としている。2018年度の実績は以下の2点に要約される。
第一に，出向制度に内在する中央・地方政府の戦略的関係を明らかにするための準備を行った。主に行政学の文献から定性的分析やケーススタディに基づき，両政府の利害関係や地方政府の政策過程における出向官僚の位置づけについて，これまでに明らかにされてきた事実を整理してモデル化の手がかりをつかんだ。
第二に，自治省官僚のキャリアパスの定量的分析を実行するためのデータ整備を行った。国内で閲覧可能な『内政関係者名簿』のうちの一部を所蔵図書館より取り寄せた。自治省に入省したキャリア官僚のうち，採用から退職までのすべての経歴を追跡することのできる期に対象を限定して，人事データの構築を開始した。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

2018年度は，国内で閲覧可能なすべての『内政関係者名簿』を収集し，それを用いて人事データの構築を行う予定であったが，予期しない2つの理由により，一部の所蔵図書館からの資料の取り寄せを次年度に持ち越しとせざるを得なかった。ひとつは図書館側の学外者に対する厳格な閲覧方針，もうひとつは2018年9月に北海道で発生した地震の影響である。この遅れは2019年度に取り戻すことができると見込んでいる。

Strategy for Future Research Activity

行政学等での定性的分析やケーススタディから明らかになった中央・地方政府の政策過程に沿って，両政府の戦略的関係が地方政府の要請する官僚の能力やランクによって異なることに着目した理論モデルを構築する。理論モデルからの予測は，次年度以降，旧自治省官僚の人事データと地方財政データを結合させた実証分析を行う上での基礎となる。
また，2018年度に収集できなかった『内政関係者名簿』をいち早く取り寄せ，採用から退職までのすべての経歴を追跡することのできる期に限定して旧自治省官僚の完全な人事データを構築する。このデータを用いて，Kojima and Takii (2019) の手法を応用した官僚のキャリアパスの定量的分析を行い，昇進と選抜についての一次分析の結果を公表する。さらに，昇進のダイナミクスを官僚にとっての外部機会の価値と関連させて，分析を深める。

Causes of Carryover

予期しない2つの理由により，一部の所蔵図書館からの資料の取り寄せを次年度に持ち越しとせざるを得なかった。ひとつは図書館側の学外者に対する厳格な閲覧方針，もうひとつは2018年9月に北海道で発生した地震の影響である。次年度使用額は所蔵図書館への旅費，資料費等にあてる予定であり，2019年度で人事データの整備に必要な資料をそろえることができる。