2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12911
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
天王寺谷 達将 岡山大学, 社会文化科学研究科, 講師 (60709773)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マテリアルフローコスト会計 / 複数価値の追求 / 持続可能な開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の論文実績(天王寺谷・東田・篠原, 2020)は、マテリアルフローコスト会計(Material Flow Cost Accounting: MFCA)の複数価値を追求する側面に着目した研究である。MFCAは、経済価値と環境価値を同時に追求する手法として一定の評価を受けている一方で、先行研究では、経済価値の増大が環境価値の増大よりも優先されるという問題も指摘されている。そこで、その要因として、MFCAにおける銘刻の変換に着目した考察を行った。銘刻は、可動性、安定性、結合可能性を有するために蓄積が可能で、銘刻に刻まれた対象の支配を可能にする。銘刻の変換は、これらの特性を向上させることに資することで対象の支配の促進に寄与するが、特に貨幣情報への変換は、結合可能性を高めることを通じて対象の支配を促進することに寄与する。MFCAの銘刻も、最終的に、異なる種類のマテリアル情報を結合した貨幣情報に変換されており、これによってマテリアルの支配が促進されていると考えられる。しかしながら、この変換プロセスでは、マテリアルの種類ごとの情報が失われており、変換後の貨幣情報という銘刻の蓄積を通じたマテリアルの支配は、経済価値の増大という側面に限定されることになるのである。この問題の解決策としては、各マテリアルの物量情報など、環境価値を追求するにあたって重要な情報が失われる前の銘刻を保持することが挙げられ、この解決策は、MFCAの普及を講じる上でも考慮すべき事項となる。また、MFCAの普及施策への貢献を念頭に、持続可能な開発という観点から、MFCA研究が蓄積してきた知見を整理した上で、今後の課題を提示する研究も行っている。当該研究は、2021年度の成果として公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外での調査が叶っておらず、研究対象が国内中心となっているものの、MFCAの普及施策を考察する上で重要な課題として、複数価値の追求にまつわる問題、持続可能な開発の視点から捉えられる問題を認識し、理解を深めることができた。次年度もこれらの問題に着目した研究を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
MFCAの普及施策を考察する上で重要な課題として、複数価値の追求にまつわる問題、持続可能な開発の視点から捉えられる問題に着目し、これまでに得られた知見を利用した質問票調査などを通じて、上述の問題を考慮したMFCAの普及施策を提案する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの問題により、海外での調査、国際学会報告が叶わず次年度使用が生じた。本年度は、質問票調査を行う予定である。
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Research Products
(2 results)