発達障害の「本質的理解」をめぐる社会学的分析

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K12936
• Research Institution: Wakayama Medical University
• Principal Investigator: 佐々木 洋子 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70647833)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 医療化 / ADHD

Outline of Annual Research Achievements

本年度は、昨年度に引き続き主として本研究の基盤となる近年の発達障害の臨床研究および発達障害をめぐる社会状況についての理解を深めるために、情報収集・データベース化およびその分析を試みている。しかしながら、当初の想定よりもCovid19の流行がおさまらないことによる影響のもと諸業務への対応等が重なり、情報収集およびデータベース化の作業レベルにとどまった。
「発達障害」という語には、複数のカテゴリーが含まれているが、これらを一律に論じることは難しいため、ADHDを中心に情報収集を行い、ADHDとの関連性を軸として他カテゴリーを扱うこととしている。
本年度は継続して、(1)作成中の日本社会におけるADHDおよび発達障害に関する出版物の出版情報についてのデータベースを更新し、研究状況等の見取り図の作成の精緻化を進めた。また、これに基づき必要な文献資料の収集を行った。発達障害としてのADHDの「理解」とはどのようなものかを素描するにあたり、ADHD の疾患概念およびADHDの理解をめぐる社会状況について、米国を中心として諸外国のの状況との比較検討をしている。(2)また、 ADHDを「理解」する主体として想定されているのは誰かについて検討する。(3)これらを総合的に扱っていくための理論枠組みの構築に向け、 障害学・医療社会学に基づく研究を中心に文献の収集・検討を進めている。障害学の議論は、発達障害の「理解」をめぐる複数の立場を整理するうえで重要であり、継続して検討している。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

今年度は、COVID-19の影響への対応および年度途中での異動等が重なり、研究時間を十分に確保することが困難であった。そのため、発達障害の「理解」という本研究計画に位置づけるための理論枠組みの構築には至ることができなかったことによる。

Strategy for Future Research Activity

今後は、理論枠組みの構築に向け、社会理論・社会学および障害学における発達障害に関する議論の収集・検討を進めていく。また、これらの成果の公表にも着手したい。

Causes of Carryover

Covid-19の影響により複数の学会等がオンラインでの開催となり、予定していた旅費の支出が取りやめになったことなどによる。その分は、次年度の文献の収集に活用したい。