2020 Fiscal Year Research-status Report
高等教育におけるジェンダー・バランスの不均衡とその是正に関する実証研究
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18K12939
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
坂無 淳 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (30565966)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジェンダー / 高等教育 / キャリア形成 / 大学 / 研究者育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では研究者に女性が少ないなどの高等教育でのジェンダー・バランスの不均衡について、実証的なデータから不均衡の原因を解明し、是正策を提案することを目的としている。そのために主に以下の2つを中心に行なっている。研究1:「研究キャリア初期におけるジェンダー差の実態」では、キャリア初期にある研究者のキャリア形成の現状と将来展望について実証的な分析を行っている。研究2:「大学のジェンダー施策の実態と課題」では、男女共同参画などの部署を持つ大学・機関を対象とし、施策の実態把握と課題の抽出を行っている。3年度目である2020年度は、新型コロナウイルスの流行によって、本研究の進行にも本格的な影響があったが、以下のように研究を進めることができた。まず、2年度目に行った日本の各大学の女性研究者支援、男女共同参画の部署への郵送調査の結果について学会報告を行い、ジェンダーを専門とする研究者からのコメントを得た。また、対面での学会参加や調査を行うことは難しかったが、オンラインで開催された学会や、大学や研究者団体のイベント等に参加し、最新情報の収集を行うことができた。さらに、キャリア初期の研究者である大学院生の将来展望や不安について、統計分析と論文執筆を進め、学会誌に論文投稿を行うことができた。また、前年度に引き続き、高等教育やジェンダー研究に関する国内外の資料の収集と先行研究の検討を行った。それらと並行して、高等教育に関するセンターの客員研究員に昨年度から引き続き就任し、また学協会など研究者団体の男女共同参画に所属するジェンダー関連の研究者や他分野の研究者とのネットワークづくりを行うことができた。これらのネットワークにおいて本研究で得た成果を社会に還元するとともに、そこで得た最新情報を本研究の遂行にも活用したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は研究2年目の2019年度までは、おおむね当初の研究計画に基づいて、研究の体制づくり、情報収集、調査、分析と成果発表を行うことができていた。しかし、2020年度からは、新型コロナウイルスの流行が本研究の進行にも本格的に影響を与え始めた。具体的には概ね以下の通りである。研究2年目までは、研究1、研究2についても、ほぼ当初の研究計画に基づいて進めることができ、データとしても、研究2の日本の各大学の女性研究者支援、男女共同参画の部署への郵送調査やその分析を行うことができている。成果については、これまで、日本教育社会学会の学会誌に他研究者と共著で本研究課題に関する論文の公表を行うことができたこと、大学院生の将来展望や不安とジェンダー差について、統計分析を行った論文を執筆し、学会誌に投稿をすることができたなど成果を得ている。しかし、2020年度から本格的に聞き取り調査を行って分析を進める計画であった研究1:「研究キャリア初期におけるジェンダー差の実態」について、新型コロナウイルスの長期的で先が読めない流行によって、対面での調査が不可能になってしまった。先が見通せない中、2021年度についても対面での調査や現地での情報収集の見込みは非常に低いと考えている。そのため、これらの調査に基づくデータ収集、その分析と成果発表を中心として、研究方法と研究期間など、研究計画の全体の大幅な見直しが必要となっており、現在その見直しを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で述べたとおり、本研究には当初の研究計画から遅れている点があるため、以下のように今後の研究を進める方針である。具体的には、研究1:「研究キャリア初期におけるジェンダー差の実態」では、キャリア初期にある研究者のキャリア形成の現状と将来展望について、当初は対面での聞き取り調査を行う計画であったが、2021年度も対面での調査ができる見込みは低いと考えられる。そのため、オンラインでの調査を行う、研究協力者の見直しを行う、調査計画自体を再考するなど、現在の状況の中で実現可能なようにデータ収集の方法を修正したい。同様に、研究2:「大学のジェンダー施策の実態と課題」でも、大学・機関での対面でのインタビュー調査は現時点では難しいと考えられるため、オンライン調査やオンラインでのイベント参加、大学・機関のホームページや公表情報の情報収集などに努めたい。研究2については、これまでにデータ入手ができているので、分析結果の文章化を進めたい。さらに、高等教育におけるジェンダー・バランスの不均衡に関する国内外の先行研究の収集を引き続き行うほか、入手できる限りで海外の高等教育におけるジェンダー・バランスに関する先行研究、情報を収集し、理論的・方法的検討を進める。最後に、上記の研究の遅れが取り戻せない場合は、研究期間全体の延長も含めて研究計画の再設計を行うことも考えたい。以上、今後はこの方策を中心に研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由として、以下がある。まず旅費について、初年度に予定していた国際学会参加ための費用を、タイミングよく国内で開催された国際学会に参加できたこと、また、学会参加費用として3年度目には国際学会参加のための費用を予定していたが、新型コロナウイルスの流行のために使用しないことになったこと、その他の学会参加についてもオンラインで行われたものが多いこと、さらに現地に赴いての情報収集や調査が不可能、あるいはオンラインになり、回数が減ったこと、これらの残金が生じている。また、人件費・謝金では、2年度目に行った研究2:「大学のジェンダー施策の実態と課題」での郵送調査において、郵送に加えて、アンケートフォームでの回答方法を追加したことで、データ入力の作業量を減らし、代表者自身のみでデータ入力を行って人件費・謝金を減らすことができた。その他、物品で予定より安価に購入できるものがあったことや、資料整理などを自身で行うことができたことなどから、使用額を減らすことができた。これらの経費は次年度以降の研究遂行のための物品費、人件費・謝金などに使用可能なため、その計画を行なっている。
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Research Products
(2 results)