2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Rise of Social Movements of the Tuberculosis and Leprosy Patients in Postwar Japan
Project/Area Number |
18K12948
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
有薗 真代 龍谷大学, 社会学部, 専任講師 (90634345)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ハンセン病 / 結核 / 新型コロナ / 感染症 / 社会運動 / 自由権 / プライバシー権 / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は第一に、戦後日本の感染症罹患者収容施設(ハンセン病療養所・結核療養所)とその周辺における集団的な実践がいかなる条件下で生起・展開し、(元)感染症患者たちをめぐる状況をどのように改善・変革していったのかを、実証的に分析することにある。第二に、戦後日本の病者・障害者らの生活状況の改善において、(元)感染症患者らの集団的実践が果たしてきた社会運動論/社会運動史上の意義を解明することにある。 今年度はようやくコロナ禍による影響が低減した。図書館・資料館・文書館の利用制限がほぼ解除されたため、文献資料調査は大きく進捗した。また、高齢者への対面でのインタビュー調査も本格的に実施できた。 今年度はとくに、戦後日本におけるハンセン病療養所入所者たちの当事者運動が、感染症罹患者のプライバシー権を中心とする自由権を社会のなかに定着させてきた過程と、その歴史的背景、その現在的意義を調査・分析した。 具体的には、戦後日本のハンセン病療養所入所者たちが、感染症罹患者やその家族の自由権・プライバシー権の確保に向けて、どのように当事者運動を展開していったのかを、運動の要求内容と方法論の両面から詳細に検討した。さらに、かれらの運動が、日本社会において先駆的に、人びとの身体や生活にかかわる次元での自由権に内実を与える役割を果たしてきたことを明らかにするとともに、新型コロナウイルス感染症を含め、21世紀日本の感染症罹患者や家族への差別抑止にも大きな影響を与えた側面を指摘した。 本研究の研究成果の一部を、岩波書店の『思想』(2023年5月号)に発表した。また『朝日新聞』(2022年10月12日夕刊)にも、本研究のエッセンスを寄稿した。さらに日本英文学会の大会シンポジウム「ケアとディスアビリティの共同性」(2022年5月21日)に招聘されて報告を行った。
|