2018 Fiscal Year Research-status Report
「証言の時代」後の日本軍戦時性暴力謝罪賠償請求運動-参加者のライフストーリーから
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18K12951
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
熱田 敬子 早稲田大学, 文学学術院, 講師(任期付) (20612071)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジェンダー / ライフストーリー / 社会運動 / 戦時性暴力 / 証言 / 中国 / フェミニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本軍戦時性暴力/性奴隷制謝罪賠償請求運動の支援者を対象とし、実証調査を行うものである。初年度は、日本と中国山西省および海南島においてフィールドワーク調査、インタビュー、文献収集を行った。 この調査を通じ、(1)1990年代以降被害女性を支援してきた、ローカル/グローバルなキーパーソンとの接触が得られた。(2)日本ではこれまでほとんど知られていなかった、1990年代における歴史資料、口述資料の存在が判明した。中国の被害女性が日本軍戦時性暴力問題化の初期から、自らの意志で謝罪と賠償を強く求めていたことを示す資料である。こうした資料を編纂した歴史学者のインタビューなどから当時の聞き取りの様子も判明した。 以上二つの成果は、1990年代に中国での被害女性の名乗り出を可能にした地域社会、国際社会、社会運動の相互に関連する構造を明らかにするものである。一般に市民運動が政治的に抑圧されてきたとされている1990年代の中国地方社会においても、被害女性の人権回復の訴えを受けとめた人たちがいたこと、またその人々が中国の中央、国際社会と連携して被害女性を支援してきたことが分かった。2019年度には、この成果をもとにさらに調査を進めるとともに、結果を随時雑誌論文、学会などで発表する予定である。 2018年度は、香港における国際会議"Gender, Sexuality and Justice: Resilience in Uncertain Times"にて、特に2010年代以降にこの問題に関心を持った若手の支援者に焦点を当てた調査結果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた香港での調査は、香港のインタビュイーの個人的な状況のためできなかったが、その分、中国での調査が進展した。ことに、90年代の中国地方社会のローカルな状況が明らかになったことは、次年度以降につながる大きな成果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に渉猟した文献資料を整理するとともに、これまでの調査で判明した日本・中国のキーパーソンに対し夏期にインタビューを行う。同時に、次年度以降に備え、韓国、台湾、上海のインタビュー対象者に連絡を取り、基礎調査を行う。 秋頃をめどに中間的成果を学会、雑誌論文に発表する。また、成果を一般に還元するために研究会を行う。
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Research Products
(1 results)