2019 Fiscal Year Research-status Report
「証言の時代」後の日本軍戦時性暴力謝罪賠償請求運動-参加者のライフストーリーから
Project/Area Number |
18K12951
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
熱田 敬子 早稲田大学, 文学学術院, 講師(任期付) (20612071)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 日本軍戦時性暴力 / ジェンダー / インターセクショナリティ / 植民地主義 / 社会運動 / 性暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国において2回の現地フィールドワーク、インタビュー調査、中国国家図書館における文史資料の文献調査を行った他、日本国内でのインタビュー調査を進めた。また、他の研究グループと共同で韓国の日本軍性奴隷制被害者の名誉回復運動についての基礎調査を行った。 これらの調査から、(1)中国の日本軍戦時性暴力被害者の支援について、これまでは知られていなかった初期の資料を発見した(2)中国における被害女性の名乗り出と対日訴訟が起きた地域の特徴が明らかになった。(3)ローカルな中国の農村からグローバルな国際運動の場まで、様々な日本軍被害者支援のアクターのつながりが明らかになった。 成果還元としては、公開研究会「中国・海南島における日本軍戦時性暴力の現在」(2019年5月)を行ったほか、日本社会学会大会研究で報告をしている。研究報告を通じて、他地域の日本軍性奴隷制の状況や大日本帝国下での軍隊性暴力に詳しい研究者と意見交換、交流を行い、日本の植民地主義、性差別、日本の中国や韓国への民族差別、被害国における少数民族差別、階層、貧困といった交差性の視点を持って、日本軍戦時性暴力と戦後の謝罪賠償請求運動を分析していく視点を確立した。 さらに、予想よりも早く研究が進展していたため、2019年度末に国際シンポジウム「ローカルとグローバルをつなぐ日本軍戦時性暴力被害者支援~中国における歴史的経緯と現状から」を開催する予定で準備を進めていた。しかし、大変残念なことに新型コロナウィルスの全世界的な流行のため、開催困難となり、延期した。代わりに中国・山西大学の研究者趙金貴氏に依頼し、オンラインでの公開講演会「山西省盂県の大娘たちの「裁判」を振り返って――敗訴からの始まり」を開催した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年、2019年を通じて予想以上に研究が進展し、特に中国における資料発掘と調査の成果が上がっていたため、本来最終年度に開催予定だった国際シンポジウムを2019年度末(2020年3月)に開催するべく準備を進めてきた。 しかし、残念なことに新型コロナウィルスの流行により、国際シンポジウムは延期せざるをえなくなった。また、台湾での国際学会で研究成果を発表する予定だったが、学会そのものが中止となり、学会前後に予定していた台湾での調査も実施不可能になった。 ウィルスの全世界的流行という不測の事態で、年度末の研究が滞ったものの、それまでに予想以上の進展があったこと、また、調査やシンポジウムが開催できなくなった代わりに、オンラインでの研究講演会を開催し、影響を最小限にとどめたことで、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は台湾、韓国での調査を進める予定であったが、現在新型ウィルスの流行により海外現地調査の予定が立ちにくい。 そのため、(1)2019年度までに収集した中国に関する資料をまとめ、論文等の形で公表すること、(2)延期した国際シンポジウムを状況が許せば開催し、難しいようであればオンラインシンポジウムや出版の形での研究交流、成果公開の方法を模索すること(3)日本国内における日本軍戦時性暴力支援運動関係者の調査を進めることを当面の目標とする。 フィールドワークやインタビュー調査にとっては、新型コロナウィルスの流行と各国の政策の影響は大きな打撃だが、オンラインインタビューなどを含め異なる形での研究を模索していく。
|
Causes of Carryover |
2020年3月(2019年年度末)に、国際シンポジウムを前倒しで開催予定となっていたため、その予算を追加請求したが、新型コロナウィルスの全世界的流行により国際シンポジウムを中止とせざるをえなくなった。
|
Research Products
(2 results)