2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K13100
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
樋口 くみ子 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00758667)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不登校支援 / 日豪比較 / 福祉行政 / 教育行政 / 教育支援センター / フリースクール |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、第一の課題である日豪の不登校支援の整理・分析を予定していた。具体的には両国の不登校支援を整理することで、それぞれの支援の特徴を分析することを目的とした。資料収集に関して、国内の資料については予定通り、国立国会図書館に複数回にわたり訪問し、複写およびパソコンへの入力を行った。結果、不登校支援団体のミニコミ誌のWEB版発行以前の号をすべて収集できた。他方で国外の資料に関しては年度末に豪州での資料収集を検討していたが、新型コロナウイルスの流行にともない、渡航を断念した。 研究成果の発信(準備を含む)については、来年度にブラジルで行われる第四回国際社会学会社会学フォーラムの要旨審査において、口頭報告で査読を通過した。また、国内の不登校支援に関する分析を論文化し、『大阪経済法科大学論集』にて発表した。分析の結果、教育支援センター(適応指導教室)の卒業生への聞き取り調査をもとに、適応指導教室の機能として、第一に学習経験の提供による階層格差の補填、第二に不登校行為に対して生じる社会的抑圧からの解放、第三に同じ不登校経験をもつ友人との自助グループ的なケア・問題解決という機能が示唆された。 研究成果の社会還元としては、大阪経済法科大学が地域連携を目的に八尾市民を対象に実施している土曜市民講座にて、「不登校のむかし、いま、これから――何が課題なのか」という表題で講義を行った。講義では不登校をどのような問題ととらえるかは時代によって異なり、現在は「非行」などの登校群の子どもたちを含まない、一部の学校に行かない子どもたちの権利の問題へと縮小されていることを解説した。そのうえで、不登校・登校概念の分離の問題と、「大学生の不登校」など不登校を問題視するまなざしの拡大の問題を論じた。講義内容は、『大阪経済法科大学地域総合研究所紀要』にまとめなおすかたちで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
豪州での資料収集は出来なかったが、国内の資料収集が進み、成果の発信もできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの状況を鑑み、海外渡航が可能な時期になるまでは、WEBまたは郵送などを介した資料収集を検討している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスのパンデミックにともない海外出張および令和2年2月以降の国内出張を断念したため、次年度使用額が生じた。令和2年度には、追加資料収集(国会図書館4回で160千円を国内旅費に計上、複写代としてその他に53千円計上)を行ったうえで、第一の課題のうち豪州の不登校支援の特徴の解明および第二の課題である「孤立した子どもたちへの支援策」の構築過程の解明を図る。具体的にはWebおよび郵送で収集する資料の分析に加え(郵送費280千円をその他に計上、謝金として20千円を人件費・謝金に計上)、親の会に質問紙調査票で資料収集を行う(英文校正50千円をその他に計上)。研究の中間報告は日本社会学会とブラジル開催の国際社会学会で行う(50千円を国内旅費に計上、500千円を外国旅費に計上)。加えて国内外の研究知見を摂取するための社会学・福祉・教育政策関連書籍(1冊5千円×40冊の200千円で計上)の設備備品費が必要となる。また、資料を電子化するためのスキャナー(50千円)、PDF編集ソフト(20千円)、各種資料の印刷に必要なプリンター(30千円)、文具・パソコン備品(96千円)、トナーカートリッジ(36千円)が消耗品費として必要となる。
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