2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K13100
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
樋口 くみ子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (00758667)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不登校支援 / 日豪比較 / 福祉行政 / 教育行政 / 教育支援センター / フリースクール / 地域格差 / 不登校 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、第一の課題である日豪の不登校支援の整理・分析をより進めるとともに、第二の課題である「孤立した子どもたちへの支援策」の構築過程の解明を目的としていた。新型コロナウイルスがおさまりをみせないなか、国立国会図書館での追加資料収集は断念せざるを得なかった。代わりに、入手可能な資料の収集とオンライン・インタビュー調査を行い、入手済みの資料も含めて、日本の不登校支援施設の地域間比較分析を行った。 具体的には2000年以降、20年以上にわたり発行され続けてきた『全国フリースクールガイド』の各年版を収集し、そこに掲載されているフリースクール・適応指導教室のデータをもとに、地理分布の把握と経年比較を行った。また、当該データがどのように収集されているのかを把握すべく、同ガイドブックを発行する学びリンク株式会社の代表取締役社長にzoomでインタビューを実施した。分析の結果、日本の不登校支援施設の地理分布は、従来の研究で指摘されていた「大都市部に設置が集中している」だけでなく、新たな特徴が浮かび上がってきた。具体的には、都市の規模に関わらず、隣接する複数の自治体が寄せ集まるかたちで、ある一定の地域に集中して不登校支援施設が設置されていないことが判明した。 これに加え、前年度収集した『不登校新聞』のデータをもとに、教育機会確保法施行前後での、不登校支援施設をめぐる自治体と保護者間関係を分析した。結果、同法施行前では、保護者の主張に対して拒否、表層的承認、部分的承認、政策・行政との協働の四種類のパターンが見られたが、施行後では表層的承認、行政による積極的包摂、政策・行政との協働といった三種類のパターンが見られた。 これらの知見は、ブラジルでオンライン開催された、第四回世界会社会学フォーラム(IV ISA Forum of Sociology)で口頭報告を行い、世界各国の研究者と知識を共有した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
豪州のインタビュー調査は出来なかったが、国内の不登校支援に関するデータを新規に収集できたうえに、地域格差の新たな特徴を発見することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの状況をふまえ、海外渡航が可能とならないかぎり、WEBまたは郵送などを介した資料収集を検討している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行にともなう海外渡航の自粛と、学会のオンライン開催にともない旅費がかからなくなったため、次年度使用額が生じた。 次年度は追加資料収集(複写代としてその他に220千円計上)と各種データの入力・翻訳(入力補助の謝金として250千円計上)を行ったうえで、第一の課題のうち豪州の不登校支援の特徴の解明を図る。具体的にはWebおよび郵送で収集する資料の分析に加え(郵送費250千円をその他に計上、謝金として20千円を人件費・謝金に計上)、親の会に質問紙調査票で資料収集を行う(英文校正100千円をその他に計上)。研究の成果をメルボルンで開催予定の世界社会学会議で報告できるようエントリーを行う(英文校正50千円をその他に計上)。加えて国内外の研究知見を摂取するための社会学・福祉・教育政策関連書籍(1冊5千円×110冊の550千円で計上)の設備備品費が必要となる。また、資料を電子化するためのスキャナー(60千円)、PDF編集ソフト(20千円)、文具・パソコン備品(162千円)、トナーカートリッジ(35千円)が消耗品費として必要となる。
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Research Products
(1 results)