2020 Fiscal Year Research-status Report
保育士のキャリア形成と職務内容・職業能力・賃金の関係-施設マネジメントの視点から
Project/Area Number |
18K13117
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
小尾 晴美 中央大学, 経済学部, 助教 (70781475)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 保育士の労働環境 / 人事・労務管理 / 労働時間 / 保育所最低基準 / 保育政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、保育所のマネジメントという視点から、保育所内で採用されている賃金制度と、キャリア形成の実態を照らし合わせ、保育士の経験年数・技能と賃金との関連、保育士のキャリア形成と賃金水準との関係について事例を通じて検討することである。このことによって保育士がキャリアを自律的に形成していくための、より効果的な政策立案・人事制度構築上の課題を明らかにすることができる。 本課題の3年目である今年度は、2年目に実施した都内の2つの保育園の園長からの聞き取り調査の資料整理と分析を行った。具体的には、施設(法人)の概要、運営費の内訳、職員数、保育士の経験年数、職位、賃金体系等、ICTの活用状況、人事労務管理制度ならびに職業能力育成システムなどについて、聞き取った内容の文字起こしならびに提供していただいた資料を照らし合わせ、情報を整理する作業を実施した。 また、厚生労働省が設置した「保育の現場・職業の 魅力向上検討会」の報告書や、「保育分野の業務負担の軽減・業務の再構築のためのガイドライン」等、この間保育のICTや働き方に関する国の政策等に関する資料収集と分析を継続している。 さらに、新型コロナウイルス感染症の流行により、各自治体において補助金の取り扱い対応の変更が生じた。さらに、感染リスクの高い保育士に対して慰労金や見舞金の支給など独自の支援が実施されている自治体の取り組みなどが実施されたことから、本研究の課題に関連する範囲で、資料収集を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本課題3年目となる本年度の最大の課題は、初年度に実施した予備調査を前提に、調査対象である複数の地域における保育園の管理職(園長、副園長、主任)、経理担当者に人事労務管理制度ならびに職業能力育成システムに関するインタビューを実施することであった。 しかし、2019年度末に予定していた札幌市への調査は、新型コロナウイルス感染症の流行のため、実施することができなかった。さらに、東京・札幌の保育園への8月の調査実施を試みたが、現地に赴いての調査は難しく、また、調査先の体制上の困難なども重なったため、オンラインという方法をとることも困難であった。 初年度に実施した聞き取り調査は予備調査という位置づけであったため、施設によって領域の語りに偏りがある。そのため、データを補うための聞き取りが今後必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
調査が計画通りに実施できなかったことから、期間延長を申請したため、次年度が、本課題の最終年度となるが、当初の目的としていた賃金制度と、キャリア形成の実態を照らし合わせるためのヒアリングは実施できていない。しかし、まずは初年度に実施した調査から、各法人、保育施設の賃金制度とキャリア形成の制度の大枠をそれぞれ別個のものとして分析し、法人理念やそれを実現する施設内での諸制度(組織編制や会議の位置づけなど)を、関連付けてとらえ、それぞれの事例における保育士のキャリア形成と賃金水準との関係について検討する作業を進める。また、オンラインでの聞き取りなど、可能な限りの方法で必要なデータを補えるよう早急に調査を実施する。
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Causes of Carryover |
次年度は最終年度であり、成果を報告するため、学会報告を行うための旅費が必要となる。また、昨年度実施できなかった調査を補う必要があるため、実施の目途が立った場合には、補足の調査を実施したい。そのための旅費も必要である。調査の分析の際には、聞き取りの内容の文字起こしが必要であり、業務を委託する予定である。また、引き続き関係する政策・制度の資料収集を行う必要が生じるため、コピーや整理用のファイル等の費用を要する。 〇研究発表:①労働社会学会大会において、札幌・東京の保育園4施設の賃金制度の事例分析について研究発表を行う。研究発表のための旅費が必要となる。②翌年の社会政策学会春季大会にて「保育の公定価格の決定にあたっての保育労働の経済評価枠組みの検討」(仮)の研究発表を行い、学会刊行誌『社会政策』に投稿する。
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