2021 Fiscal Year Research-status Report
自閉スペクトラム症における社会的認知の促進:ライブ呈示による再検討
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18K13211
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊池 由葵子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (90600700)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 社会的認知 / 顔 / ライブ呈示 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症青年・定型発達青年を対象に、アイコンタクトに対する反応をライブ呈示と写真呈示で比較した。これまで多くの研究により、自閉症者は他者の目に対する注意が弱い傾向が示されてきたが、そのほとんどが写真を使用して顔刺激を呈示した研究だった。定型発達成人を対象として、写真ではなく実際の人物と対面する実験(ライブ呈示)を行った研究では、対面相手とのアイコンタクトにより、写真呈示では見られないような注意の高まり(心拍数の減少など)が見られることが報告されている。本実験では、自閉症青年・定型発達青年を対象に、実際の人物と対面したとき(ライブ呈示)、あるいは同じ人物の顔写真を見たとき(写真呈示)のアイコンタクト(正面向きの目)やよそ向きの目に対する注意を検討した。課題中の心拍数を計測し、刺激呈示後の心拍数の減少を指標とした。 その結果、定型発達青年と同様、自閉症青年においても、ライブ呈示の正面向きの目ではよそ向きの目にくらべて心拍数が減少し、アイコンタクト(正面向きの目)に対する注意の高まりが見られたが、写真呈示ではそのような差は見られなかった。定型発達青年では、正面向きの目が呈示された直後に心拍数が減少したのに対し、自閉症青年では、心拍数の減少はやや緩やかだった。また、自閉症青年では、年齢が上がるほど、正面向きの目に対する心拍数の減少が大きい傾向が見られたが、定型発達青年では、年齢と心拍数の減少に自閉症青年ほどの関連は見られなかった。このような群間差は見られたものの、両群ともにライブ呈示の効果は強く、自閉症者においても定型発達者と同様に、アイコンタクトに対する注意の高まりが見られたと考えられる。 本実験の成果は、Autism Research誌(DOI: 10.1002/aur.2676)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、対面実験が実施できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ライブ・ビデオ呈示で行った視線追従実験に関して、注視データの分析結果をまとめ、論文を投稿する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、対面実験ができなかったため、次年度使用額が生じた。
実験のための物品費、国際/国内学会での発表や研究打ち合わせのための旅費、実験参加者への謝金や事務・解析補助者への人件費、学術誌への投稿料や英文校閲費、通信費などに使用する。
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Research Products
(1 results)