2018 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害児を対象とした格助詞学習のための教材開発と指導法の検討
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18K13215
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
坂口 嘉菜 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 助教 (40814067)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 文法学習 / 教材開発 / 格助詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は聴覚障害児を対象とした文法学習教材の開発及び指導法の検討を行うものであり、具体的には格助詞の学習教材の開発及び指導法の検討を目的としている。これまでの研究実績からは、聴覚障害児の格助詞選択の際に音声が同時に流されるような教材が正しい格助詞選択に繋がること(音声情報が格助詞選択に影響を与えていること)が示唆されており、また、動作の方向が分からない構文における格助詞学習においては、アニメーションによる解説が有効であることが示唆された。今年度は、年齢段階ごとにアニメーションを用いた格助詞学習教材及び音声を用いた格助詞学習教材の効果について検討を行った。特別支援学校(聴覚障害)に在籍する小学生及び中学生計20名を対象とし、アニメーションによる動作主・構文の説明、音声が格助詞判断に与える影響について検討を行った。方法としては、事前の格助詞理解テストを行ったのち、それぞれの教材を用いて一定期間格助詞指導を行った。事後テストを行い、成績の伸長を分析し、学習による効果を測った。 音声を用いる学習教材の検討からは、成績が伸びるものと伸びない格助詞間に共通性がみられず、構文中における格助詞の語音明瞭度をふまえた検討が必要となったため、次年度検討を加えることとなった。また、アニメーションによる解説教材については、小学部高学年から中学部の児童・生徒の得点に影響を与えた。年齢段階による検討を行ったが、既有の文法的知識による検討も同時に行う必要があったため、新たに分析の視点を加えて研究を行った結果、文法的知識をある程度もつ児童・生徒にとって有効であったと考察された。本研究に関連して、学会発表(口述)を1件、学会発表(ポスター)を1件、論文執筆を1件行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アニメーション教材については一定の文法的知識をもつ場合に効果的であることが示された。視覚的情報を用いた格助詞学習に対して学術的に評価を行うことができたものと考えられる。教材を用いた格助詞学習の成果を測定した評価方法については、クローズ法による正誤課題だけではなく、新たに作文法を用いたことも本研究の特徴といえる。表現の正確さだけではなく、表現の広がりについても評価を行う方法についても、学術的な進展があったものと思われる。また、音声が格助詞選択に与える影響については、個人の語音聴取の状況を踏まえた音響学的検討も併せて必要であるとの方向性を得ることができた。こうしたことから、本研究の進捗状況については、学術的研究としておおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、聴覚障害児を対象とした格助詞学習の教材開発及び指導法の検討を目的としており、今年度の研究成果からは、音声が格助詞選択に影響を与えうることが示唆された。音声情報がどの格助詞・構文において影響を与えうるのか、また、個人の語音聴取の状況から音声情報の成分について検討を加える必要がある。 当初より、次年度については音声情報を用いた格助詞教材の年齢段階別検討を予定していたが、語音聴取の課題を計画に組み入れて対応することが可能である。 今後の研究の推進方策としては、対象児童・生徒の語音明瞭度、文法的知識のアセスメントを行ったうえで、格助詞教材の実践的検討を行う。対象児童・生徒数を増やして検討を行うため、現在協力を依頼しているA聾学校・B聾学校に加え、C聾学校・D聾学校にも研究依頼を行う予定である。使用するiPadの台数については、レンタルのものを用いるなどして対応する。研究の推進については十分可能であると考えられる。
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Causes of Carryover |
データ整理の補助員を雇用する計画であったが、データ数が想定よりも少なかったことから、雇用が生じなかった。次年度は、データ数を増やす予定であるため、次年度に人件費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)