2018 Fiscal Year Research-status Report
進路として理系を選択するまで:生徒の意思決定プロセスの質的分析
Project/Area Number |
18K13256
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 紗知 大阪大学, 国際教育交流センター, 講師 (70769067)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 理系 / 文理選択 / 質的研究 / 文系観 / 理系観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「理科離れ」が懸念される中、理系の大学生が進路として理系を選択するに至った要因を同定することである。そのために、理系・文系学部に所属する大学生にインタビューを実施し、その記録を質的手法により解析している。2018年度は当初18名の学生へのインタビューを予定していたが、研究が当初の予定より順調に進んでいたことから、合計42名の学生へのインタビューを実施した。また現在およそ30名のインタビューデータの解析が終了したところである。国内の理科離れが懸念される中、日本には一定数の生徒が「理系学部に進学」したり、「理系キャリアを選択」したりするという現状がある。そこで本研究では当初、このような学生は、何らかの理由でそれぞれが理科科目や科学一般に関心を持ち、自分の将来として関連づけるに至ったと考えていた。しかしこれまでの解析により、文系科目が苦手だから理系を選んだり、将来への期待や親の思いなど周囲の人間との関わりも影響を及ぼしたり、さらに一旦決めた進路を変更したりするケースがあることが明らかとなった。つまり「理系学生=理科好き」という単純な仮説は成り立たないことがわかる。そこで現在は、「様々な経験を乗り越えてなお理系にとどまり続けた」という点に注目し、この選択に影響を与える要因を明らかにするために解析を進めている。またインタビューの中で学生たちは、文理選択に伴う悩みや葛藤、周りの生徒や家族との絶え間ない比較を通して自身の能力や適性を把握してきた経緯を語った。そしてその中で、「文系・理系の人」というイメージがともに形成されることが示唆された。つまり、「文系・理系観」というのは、文理選択前後の個人の経験に基づき形成される概念である可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度は当初18名の学生へのインタビューを予定していたが、研究が当初の予定より順調に進んでいたことから、合計42名の学生へのインタビューを実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は残り12名へのインタビューを実施するとともに、インタビューデータの解析を続ける。また「文系・理系観」というの概念が、文理選択前後の個人の経験に基づき形成される概念である可能性があることが示唆されたことから、現在はこの「文系・理系観」の形成プロセスについても同時に研究を進めている。
|