2019 Fiscal Year Research-status Report
進路として理系を選択するまで:生徒の意思決定プロセスの質的分析
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18K13256
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 紗知 大阪大学, 国際教育交流センター, 准教授 (70769067)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 理系 / 文理選択 / 質的研究 / 文系観 / 理系観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「理科離れ」が懸念される中、理系の大学生が進路として理系を選択するに至った要因を同定することである。そのために、理系・文系学部に 所属する大学生にインタビューを実施し、その記録を質的手法により解析している。 日本では多くの生徒が文系もしくは理系を選択するが、これまでの分析から、この文理選択が文系・理系の自己認識の形成プロセスを経ること,またその時,各教科に対する得意意識や苦手意識の存在が大きな影響をおよぼすことが明らかとなった。これら意識は,他者と比べた自身の成績や,他科目と比べた時の相対的なコストパフォーマンスの良し悪しにより形成されるが,「ある教科ができない」という自覚は,長期的な学業ストレスに繋がりうる. さらにインタビューデータを精査したところ、学業的ストレスへの回避の手段として「開き直り」が見られた.これは自分が苦手とするある教科に対し,できないことを正当化するような態度のことである。この「大したことではない」という考えは,心理的ストレスを低減させるための対処行動の一つとして知られる「問題価値の切り下げ」に相当する可能性がある。 この「問題価値の切り下げ」だが、本研究で見られた12事例のうち,国語が7事例,社会科が4事例であったのに対し,数学は1事例であり,理科に対しては見られなかった.このことから,「問題価値の切り下げ」により成績ストレスを回避できるのは,特定の教科に限られる可能性が示唆された.つまり,教科によっては苦手意識を回避しにくく,その結果,生徒が長期的な学業ストレスを抱えてしまう可能性がある可能性があると言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度、本研究において予定していた学生インタビューは全て完了した。またインタビューデータの質的分析も完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の分析より、学生の文系・理系の理解には理論的立場が関与する可能性が示唆された。そこで本研究では、この視点を新たに加えて分析を進める。さらに本年度は、研究結果の発信のため、学会での発表および査読誌への投稿も予定している。
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Causes of Carryover |
インタビューデータの文字起こしについては、適当な学生RAが見つからなかったため研究者本人が行ったことで、人件費が一部余剰となった。この分については、次年度、新たなデータ分析用の書籍購入に当てることを予定している。
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Research Products
(2 results)