2020 Fiscal Year Research-status Report
マウストラッカーを用いた処理分離型の潜在指標の検討
Project/Area Number |
18K13269
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
川上 直秋 島根大学, 学術研究院人間科学系, 講師 (80633289)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マウストラッカー / 意味的プライミング |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの実績により、マウストラッカーによる新たな人間の認知処理測定の可能性が示された。そこで、本年度においてはこれまでの知見をさらに展開させることを目的とした研究を実施した。具体的には、マウストラッカーを用いて、ヒューマンエラーを測定する試みである。ヒューマンエラーには様々な種類があるが、本年度は特に見間違いに着目した。例えば、「トレイ」という単語を「トイレ」と見間違うなどである。これまで、このような見間違いに関する研究は多くの場合、反応時間やエラー率がその指標となっていた。しかし、現実的には実験場面においてエラーが生じる確率はそれほど高くなく、それらが見間違いの検出に必ずしも適切な方法であるとは言えない。そこで、マウストラッカーを用いて、表示される単語が単語として成立しているか否かをマウストラッカーを用いて判断させることで、エラーには至らないがエラー寸前まで到達するような判断のプロセスの検出を目指した。そこで、実験ではエラーの誘発を促進させるため、意味的プライミング課題を用いた。すなわち、「人物」に関連する単語をプライムとして呈示すると、その後のターゲット刺激への判断において「人物」関連語へのアクセシビリティが高まることで直感的な判断傾向が促進され、人物関連の非意味単語へのエラー反応が高まることが予測された。実験の結果、しかしながら、判断に至るマウスの軌跡に顕著な差は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は人間の認知処理過程の検出手法としてのマウストラッカーの可能性を検討することであった。統計的に有意な効果は認められなかったものの、実験状況や実験刺激の変更などにより更なる検討の可能性が示されたため、次年度への継続的な研究へと展開することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果を受け、今後はマウストラッカーを用いた測定について、さらに展開させることを目指す。具体的には、本年度は意味的プライミング課題を用いた検討であったが、感情的プライミングや社会的プライミングなどの課題を用いることで、マウストラッカーの可能性を探る方針である。
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Causes of Carryover |
当該年度は新型コロナウイルスの影響により学会出張などに厳しい制限があり、当初予定していた旅費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。 翌年度は、新型コロナウイルスの状況を見ながら適切な助成金の使用を行う。特に、学会出張等の制限が続く場合は、これまでの研究成果の論文化を精力的に行い、その英文校正などに助成金を用いる予定である。
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