2018 Fiscal Year Research-status Report
情動表出としての雄マウス超音波発声を制御する分子神経基盤
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18K13371
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
菅野 康太 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80722470)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 音声コミュニケーション / マウス / 超音波発声 / ドーパミン / 求愛 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの音声コミュニケーションは、病態モデルの遺伝子改変マウスなどでも解析がなされ、近年注目されている。それにも関わらず、神経メカニズムが不明であるどころか、各発声内容に含まれる「意味」も不明瞭なまま用いられてきた。しかし、申請者は、個体の性的動機づけの強さに応じて発声回数が増加するとともに、発声内容も複雑化することを見出している。このことは、個体差として観察されるだけでなく、個体内変動としても観察される。つまり、同一個体でもその時々で発声パターンが変化する。さらに、発声の多い個体ではドーパミン神経の活性が高まることも突き止めている。本研究では、このような感情表現とも取れるマウス求愛発声のメカニズムを解明することを目的としている。 そのため、ドーパミン神経の活性を操作した際の発声内容変化を観察することをもって情動表出であることを実験的に確認することを目指している。平成30年度は、このような実験を可能にするための実験系のセットアップを行ってきた。現在、超音波と動画を同期するシステムを有しているが、さらにそこに、神経活動を操作するための光刺激を与えたタイミングのタイムスタンプを同期記録する方法や、神経活動記録を同期し、一元管理する方法を模索してきた。それらを可能にする方法論におおむねの目処がつき、実際の機器の接続を確立する段階となっている。また、それら実験をするために必要な脳への遺伝子導入をするための実験系を揃えた。 得られた音声シグナルの解析に関しては、自動分析するシステムを共同研究で開発し、プレプリント論文として公開中で、現在査読中である。また、そのシステムのプログラムも公開している。 その他、各種学会などに招待され、研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
鹿児島大学に着任して間もなかったため、実験室の整備に多くの時間を費やした。特に、実験をスムーズに行うための飼育設備の構築に時間がかかった。また、超音波測定計と脳の光遺伝学的刺激や、今後脳活動の測定を行うための同期システムの設計に時間を費やした。 しかし、これらは概ね解決され、理想的な環境が出来上がりつつある。マウスの飼育から行動実験、組織学実験までをシームレスに行うことができる環境を、現在では得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
光刺激装置と超音波測定系を同期させ、刺激時間と音声シグナルの動機を確立したのち、研究計画にある行動実験を遂行する。また、新たに参画する指導学生とともに研究を行い、より効率的に実験を遂行する。
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Causes of Carryover |
50万円を光遺伝学実験のための光刺激装置作成代として見込んでいたが、近年の機材の小型化および低価格を勘案し、機材選定を見直した。また、研究の進捗状況でも記した通り、実験室全体の整備、特に飼育設備のセットアップに時間を要したこと、超音波測定系との同期方法の設計途中であったこともあり、研究自体が遅れていたため、購入を見送っていた。 しかし、年度途中で他の予算を得ることができ、超音波測定系との同期方法の目処がついたことにより、光刺激装置だけでなく、神経活動のイメージング装置と光源を共有し、一括して購入することで、トータルとしては当初予想よりも安価で高性能な実験系を得られる状況になった。そのため、予算を次年度に繰り越し、次年度予算と合わせることで、より最適な機材を購入・設計することとした。
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Research Products
(9 results)