2018 Fiscal Year Research-status Report
熱過程を考慮した分子計算によるダイバータ損耗・蓄積にHeバブルが及ぼす影響の解明
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18K13528
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
齋藤 誠紀 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (40725024)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘリウムバブル / タングステン / 拡散 / 中性子遮蔽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、磁場閉込め核融合装置のダイバータにヘリウム灰が及ぼす影響を原子スケールで解明することである。特に、ヘリウムバブルの影響を理解するため、加熱に伴う熱的物理過程を取扱う計算コードの開発を目指す。①熱振動に伴う欠陥回復、②粒子拡散に伴うHe原子の乱雑運動、③熱伝導、④熱振動に伴う原子位置の変位の四種の熱的物理過程を組み入れた革新的な分子計算コードを開発し、He灰の影 響を高精度に予測することを目指す。 H30年度の実施項目を以下に記す。 ①熱振動に伴う欠陥回復に関しては、University of California San DiegoのS. Krasheninnikov教授の研究室に1.5か月滞在させていただき、Krasheninnikov教授が利用する分子動力学計算用のタングステンポテンシャル関数を紹介していただいた。そして、自身のコードへの移植作業を完了した。 ②粒子拡散に伴うHe原子の乱雑運動に関しては、自身のコードに一次元の単純な拡散方程式を実装し、タングステン材に侵入したヘリウム原子の拡散過程を計算可能にした。さらに、S. Krasheninnikov教授の研究室で利用している反応拡散コードFACEの使い方を学ぶとともに、自身のコードとの連結の許可を得た。次年度以降、コード連結の作業を行う。 課題申請時の実施項目には含めていないが、ヘリウムバブルの中性子遮蔽効果の検証も開始した。モンテカルロ計算コードPHITSを用いて、直径0.1cm、高さ2.0cmの円柱状タングステンの中に直径10μmのヘリウムバブルを20μm間隔で均等に配置した標的材を用意し、中性子照射の計算を行った。計算の結果、ヘリウムバブルの存在は中性子遮蔽に有意に寄与しないとの結果が得られている。本研究は、国際会議「ISPlasma 2019」にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究設備に関して、GPUを搭載したワークステーションを1台導入したことで、計算環境が整い高速な計算を可能にする準備が整った。 研究内容に関しても、研究実績の概要に示した通り、①熱振動に伴う欠陥回復に関しては、分子動力学法のポテンシャル関数の導入を完了した。②粒子拡散に伴うHe原子の乱雑運動に関しても、まずは、一次元の単純な拡散方程式を実装することで、ヘリウム原子が拡散する系を計算できることを示した。また、中性子遮蔽についての検証を進めることができた。 異動があったこともあり、その他の実施項目については若干遅れている部分もあるが、全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
①熱振動に伴う欠陥回復に関しては、H30年度の完了したタングステン系のポテンシャル関数をベースにMD計算コードとAC∀Tコードの連結を進める。 ②粒子拡散に伴うHe原子の乱雑運動に関しては、Krasheninnikov教授から利用許可を得た反応拡散コードFACEとの連結作業を進める。 ③熱伝導に関しては、1次元の熱伝導方程式を実装するとともにMD計算領域との連結を可能にし、MD計算領域から外へ熱エネルギーが出ていく系を模擬する計算手法の開発を目指す。 ④熱振動に伴う原子位置の変位に関しては、ボルツマン分布に乱数を用いて原子位置を格子点から変位させる。また、DFT計算を実施し、ばね定数を決定する。 さらに、ヘリウムバブルの中性子遮蔽効果に関してもより精度の高い計算を行う。 また、上記の計算コードの構築と並行して、導入したワークステーションとGPUを利用した並列計算が実施できるようにコードを改良する。
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