2020 Fiscal Year Research-status Report
熱過程を考慮した分子計算によるダイバータ損耗・蓄積にHeバブルが及ぼす影響の解明
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18K13528
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
齋藤 誠紀 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (40725024)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分子動力学法 / タングステン / 水素リサイクリング |
Outline of Annual Research Achievements |
核融合炉中では、炉壁に水素やヘリウムのプラズマが照射される。その結果、ヘリウムや水素のバブルが形成されるなどし、炉壁の損耗が問題となる。本課題では、タングステン材や炭素材へ水素やヘリウムプラズマ照射する分子動力学計算を実施し、その損耗過程やプラズマリサイクリングの素過程を原子スケールで解明することを目指す。 本年度は、昨年実施したタングステン‐水素相互作用に関する研究を継続し、昨年行った試行計算をベースに、異なるH/W条件での各種エネルギー・放出角分布のデータを充実させた。その結果、通常のプラズマ照射環境下であるH/Wが0.5より小さい範囲においては、分子よりも原子として放出される水素が支配的であることがわかってきた。H/Wが0.5を超えると、放出水素原子数の位置水素原子入射あたりの平均値は、H/Wの値によらず約1.5個だが、放出水素分子数はH/Wの増加に伴い増加し、H/W=0.5では約0.3個、H/W=1.0では約0.6個、H/W=1.4では約4.7個となることが分かった。放出時間の解析からは、原子として放出する場合と比べ、水素分子として放出する場合は、1桁長い時間(1ps程度)を要することが示された。この傾向は、アモルファス炭素における水素リサイクリングについて調べた先行研究と同じである。また、入射水素および放出水素の深さ分布にも注目した解析を行い、原子として放出する場合と分子として放出する場合とでは、放出水素の初期深さにそれほど差がないことも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
タングステン-水素系をターゲットにした計算は進んでおり、水素放出過程の素過程と、各種分布の計算が完了しつつある。しかしながら、コロナに関連する授業や卒業研究の学生対応で研究時間が確保できず今年度の進捗は芳しくなかった。特に、当初ターゲットにしていたヘリウム系の計算は、ポテンシャル関数の実装こそ終わっているものの、計算が滞っている。タングステン‐水素系のフレームワークをヘリウム系に適用し、計算を実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1. H/W、材料温度、入射エネルギーなどの多様なパラメータ下における放出水素原子・分子のエネルギー分布等を調べる。 2. 放出水素原子・分子の標的材構造依存性を調べる。 3. ヘリウム原子と水素原子の相互作用を取り入れ、ヘリウムと水素が同時に照射される場合や、ヘリウムバブルが水素プラズマ挙動に与える影響を調査する。
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Causes of Carryover |
コロナ対策に伴う業務負担のため研究時間が確保できなかった。次年度以降に研究を進めるため、42474円の研究費を残した。
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