2021 Fiscal Year Research-status Report
すばる望遠鏡の補償光学を用いた高解像度Paα輝線観測による銀河進化過程の解剖
Project/Area Number |
18K13588
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
小山 佑世 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (40724662)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 銀河進化 / 星形成銀河 / すばる望遠鏡 / 補償光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、すばる望遠鏡の近赤外線観測装置IRCSに波長1.984ミクロン帯の光を透過する狭帯域フィルター(NB1984)を新たに開発し、地上望遠鏡でPaα輝線を捉えることができるもっとも近傍宇宙(赤方偏移0.05-0.06)の銀河に狙いを絞って観測を行う計画である。すばる望遠鏡の補償光学を用いた高解像度観測を行うことで、各銀河を巨大分子雲のスケールにまで分解してその内部の物理状態を調査することを目的としている。一年目(平成30年度)に上記の狭帯域フィルターを開発し、二年目(令和元年度)には無事にIRCSへの搭載を完了して同フィルターを一般共同利用に公開した。三年目(令和2年度)にはこのフィルターを用いる近傍銀河のPaα輝線観測提案がすばる望遠鏡の共同利用観測として採択され、5天体についてJバンド、Kバンド、NB1984の3つのフィルターで観測を実行することができた。新型コロナウイルスの感染拡大によって研究期間を延長した四年目(令和3年度)には、さらに追加で4天体について同様の観測を行う機会に恵まれ、合計で9天体のデータが揃ったところである。なお本研究では、すばる望遠鏡のレーザーガイド星システムのアップグレードに合わせて観測を実行する予定であったが、そちらの開発の遅れによって、すばる望遠鏡では長期間にわたりレーザーガイド星を使う補償光学観測が受け付けられない状況であった。しかし本研究では、ナチュラルガイド星を使う補償光学(NGS+AO)でも観測可能な天体を厳選することで、近傍銀河の高解像度Paα輝線観測を実現することができた。現在このデータの解析方針を研究協力者と詰めているところであり、令和4年度にはこれまでに得られた全データを統一的に解析し、その成果を論文にまとめたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では当初計画していたとおり、すばる望遠鏡の近赤外線観測装置IRCSに波長1.984ミクロン帯を透過する狭帯域フィルターを製作・搭載し、令和2年度にはそのフィルターを使用する近傍銀河のPaα輝線観測提案がすばる望遠鏡の共同利用観測に採択され、無事に観測が実行された。さらに令和3年度には追加でデータを取得する機会に恵まれ、合計で9天体についてPaα輝線マッピングデータを取得することができた。これは当初の科学目標を達成し、論文として出版するのに十分なサンプルである。令和2年度に続き令和3年度も新型コロナウイルスの感染状況によって、予定していた研究協力者とのデータ解析打合せのための出張ができなかったこと、また成果発表の機会が大きく失われたことで一部遅れは生じているが、令和2年度・令和3年度に取得したデータを一様に解析することで、当初予定していた以上の成果にまとまる可能性もあると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、当初令和2年度を最終年度と予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて令和4年度まで延長されている。今後は、まず令和2年度および令和3年度に取得したデータについて一様に解析を完了し、観測した9天体について銀河内部の星の分布と星形成活動の分布を描き出し、その結果を論文にまとめるとともに、国内外の研究集会などで発表する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は令和2年度に引き続き新型コロナウイルスが世界的に蔓延しており、予定していた研究協力者らとのデータ解析の打合せに赴くことができなかったこと、また成果発表のために予定していた出張旅費を執行できなかったことが影響している。令和4年度には、延期されていたこれらの出張が再開できると見込んでおり、主にその出張旅費として使用する計画である。
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