2022 Fiscal Year Research-status Report
すばる望遠鏡の補償光学を用いた高解像度Paα輝線観測による銀河進化過程の解剖
Project/Area Number |
18K13588
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
小山 佑世 国立天文台, ハワイ観測所, 准教授 (40724662)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 銀河進化 / 星形成銀河 / すばる望遠鏡 / 補償光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、すばる望遠鏡の近赤外線観測装置IRCSに波長1.984ミクロン帯の光を透過する狭帯域フィルター(NB1984)を新たに開発し、地上望遠鏡でPaα輝線を捉えることができるもっとも近傍宇宙(赤方偏移0.05-0.06)の銀河に狙いを絞って観測を行う計画である。すばる望遠鏡の補償光学を用いた高解像度観測を行うことで、各銀河を巨大分子雲のスケールにまで分解してその内部の物理状態を調査することを目的としている。一年目(平成30年度)に上記の狭帯域フィルターを開発し、二年目(令和元年度)には無事にIRCSへの搭載を完了して同フィルターを一般共同利用に公開した。三年目(令和2年度)にはこのフィルターを用いる近傍銀河のPaα輝線観測提案がすばる望遠鏡の共同利用観測として採択され、5天体についてJバンド、Kバンド、NB1984の3つのフィルターで観測を実行することができた。新型コロナウイルスの感染拡大によって研究期間を延長した四年目(令和3年度)には、さらに追加で4天体について同様の観測を行う機会に恵まれ、合計で9天体のデータが揃ったところである。なお本研究では、すばる望遠鏡のレーザーガイド星システムのアップグレードに合わせて観測を実行する予定であったが、その開発スケジュールの遅れによって、すばる望遠鏡では長期間にわたりレーザーガイド星を使う補償光学観測が受け付けられない状況が続いた。しかし本研究では、ナチュラルガイド星を使う補償光学(NGS+AO)で観測可能な天体を厳選し、近傍銀河の高解像度Paα輝線観測を実現することに成功している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で研究協力者との対面での作業ができず、データ解析作業に遅れが生じているが、オンラインでの議論等を通してその解析ソフトウェアは完成しており、早急に解析を完了してその成果を論文にまとめる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では当初予定していたとおり、すばる望遠鏡の近赤外線観測装置IRCSに波長1.984ミクロン帯を透過する狭帯域フィルターを製作・搭載し、令和2年度にはそのフィルターを使用する近傍銀河のPaα輝線観測提案がすばる望遠鏡の共同利用観測に採択され、無事に観測が実行された。さらに令和3年度には追加データを取得する機会にも恵まれ、合計で近傍銀河9天体についてPaα輝線マッピングデータを取得することができた。これは当初の科学目標を達成し、論文として出版するのに十分なサンプルである。しかしながらコロナ禍が長期化し、令和4年度も予定していた研究協力者との対面でのデータ解析のための打合せが実施できなかったことが影響して、データ解析作業は遅れている。それでもオンラインでの議論などを通して見通しは立ってきたところであり、次年度こそは最終年度としてデータ解析を完了し、成果発表につなげたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、採択時には令和2年度を最終年度と予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて令和5年度まで延長されている。最終年度となる令和5年度には、データ解析について研究協力者との対面での議論・集中作業を行い、まずは令和2年度および令和3年度に取得したデータの解析を完了する。そして観測した9天体について銀河内部の星の分布と星形成活動の分布を描き出し、その結果を論文にまとめるとともに、国内外の研究集会などで発表する。
|
Causes of Carryover |
令和4年度は令和2年度・令和3年度に引き続き新型コロナウイルスの世界的蔓延が収束しておらず、予定していた研究協力者らとのデータ解析の打合せに赴くことができなかったこと、また成果発表のために予定していた出張旅費を執行できなかったことが影響している。令和5年度こそは、延期されていたこれらの出張が再開できると見込んでおり、主にその出張旅費として使用する計画である。
|
Research Products
(6 results)