2018 Fiscal Year Research-status Report
多様な地球型惑星が持つ衛星系の起源・進化の統一的理解に向けた理論研究
Project/Area Number |
18K13600
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
兵頭 龍樹 東京工業大学, 地球生命研究所, JSPS特別研究員 (20814693)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 惑星探査 / 衛星形成 / 火星衛星 / 月 / 冥王星 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請書に記載したとおり、本年度は、円盤内での物質の昇華や凝縮を組み込んだ「1次元の物質の化学進化計算コード」の開発を行った。本研究の内容は、"天体同士の巨大衝突によって惑星周りに形成される円盤内での物質進化"、および、"太陽系などの惑星系形成過程の初期段階において太陽などの主星周りに存在するガス円盤(原始惑星系円盤)における物質進化"を理解するために重要となる。さらに本研究は、観測される衛星系の多様性を理解する物理・化学プロセスを明らかにすることを目的とする。また本研究の結果を、観測や惑星探査に役立てることを目的とする。
本年度は、主星からの距離(動径方向)を1次元とする計算コードの開発において、円盤内での温度・圧力情報を解くことで、個々の粒子の物性に応じて昇華と凝縮を矛盾なく扱うコードの開発を行った。例えば、円盤内において、物質は動径方向の移動を行う。その過程で、物質が昇華・凝縮を経験することになるが、その動径距離は、物性によって異なる。それゆえに本研究では、各粒子に必要な物性の情報と混合率を与えることで、初期に異なる物質が混じり合った粒子でも矛盾なく昇華と凝縮を解くことが可能となった。さらに本年度は、巨大衝突によって形成されうる衛星系の多様性を理解するために、多数回の巨大衝突計算を行った。それによって、太陽系の外縁に存在する冥王星などの準惑星が持つ巨大な衛星系が、巨大衝突によって観測に矛盾なく形成されうることを明らかにした。このような結果は、「比較衛星学」として、地球型惑星が持つ衛星系の多様性を理解する上で重要となる。本研究は、平成30年度に国際学術誌(Nature Astronomy)に投稿し、平成31年度に査読を経て、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載したとおり、1次元の計算コードの開発は順調に進んでいる。さらに、本研究課題である「衛星系の多様性の起源の理解」に準じて、太陽系外縁部に存在する準惑星が持つ衛星系が巨大衝突によって形成されうることを明らかにし、すばやく査読ありの国際学術誌(Nature Astronomy)に投稿し、出版することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載のとおり、今後は、1次元の計算コードに、円盤内での物質の動径移動などの力学進化を組み込む。また開発した計算コードを、申請書に記載した衛星系形成円盤だけでなく、惑星系形成円盤(原始惑星系円盤)にも応用し、惑星系の形成過程の理解にも取り組む。このような取り組みは、惑星周りの衛星系の形成は、主星周りの惑星系の形成のミニチュア版であるという観点から、衛星系の形成過程をより深く理解するために役立つ。
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Causes of Carryover |
研究計画書に記載の通り、シミュレーションのコード作りとシミュレーションの実行に必要となるハードディスク等のパソコン周辺機器を購入予定であったが、購入した製品が、見積もり段階よりも安価であったため次年度使用額が生じた。今年度に生じた次年度使用額は、翌年度に、研究計画書に記載した通り、新たなコンピュータ等の購入に使用する。
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