2018 Fiscal Year Research-status Report
Dynamism of fluid pressure in subduction zones revealed by tracer-diffusion experiments on reaction zones
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18K13628
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宇野 正起 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (50748150)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 岩石ー流体反応 / 流体圧分布 / 浸透率 / 流体活動タイムスケール / 反応輸送モデリング / 地殻流体 / 変成作用 / 沈み込み帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,アパタイトー塩水系の反応実験の立ち上げを行うとともに,東南極セールロンダーネ山地の反応帯の熱力学解析と反応輸送モデリング,三波川変成帯の岩石ー水反応帯の野外調査と化学組成分析により,地殻浸透率の実効値と破壊によるその変動過程を明らかにした. アパタイトー塩水系の反応実験では,水酸アパタイト・フッ素アパタイトの焼結体および単結晶とNaCl, HCl, NaF, NaOH溶液など種々の溶液を300-450℃で反応させ,粒界拡散による拡散プロファイルの作成を試みた.その結果,水酸アパタイトーNaCl, HCl水溶液系では置換反応が進まなかったが,フッ素アパタイトーNaOH水溶液系での置換反応の進行が確認され,現在さらなる条件の制約と拡散プロファイルの生成を試みている. セールロンダーネ山地の反応帯解析では,花崗岩質岩脈ーグラニュライト反応帯(0.5 GPa, 700°C),グラニュライトー水反応帯(0.5 GPa, 600°C),直方輝石角閃石片岩ー水反応帯(0.3 GPa, 450°C)の反応帯に対して,熱力学解析により亀裂ー母岩間の流体圧分布を制約した.また,アパタイト中の塩素およびフッ素の亀裂ー母岩間の濃度プロファイルに対して反応輸送モデル解析を行い,流体活動の時間スケールを制約した.以上より,花崗岩質脈ーグラニュライト反応帯は100~300日,グラニュライト/直方輝石角閃石片岩ー水反応帯は1~6時間の極めて短い流体活動であったこと,その母岩の浸透率は10^-20~22 [m^2]と低い値で一致することが明らかになった.一方,花崗岩質岩脈や亀裂は10^-15 [m^2]以上の非常に高い浸透率を持ち,流体の優先的な流路であったことが示された.以上より,流体圧上昇と亀裂生成によるダイナミックな浸透率変動を天然岩石より実証することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微量元素浸透実験については,アパタイトが反応しづらく実験系の立ち上げに時間がかかったものの,種々の反応条件を試したことにより反応拡散プロファイルを生成可能な条件を見出しつつある.また,天然の岩石ー流体反応帯解析では,様々な温度・圧力条件の反応帯に対して,流体圧分布および浸透率の見積りに成功しており,中部ー下部地殻の浸透率が従来の定説であった10^-18 [m^2]よりも大きく低く10^-20~22 [m^2]であることを見出すとともに,亀裂生成(>10^-15 [m^2])により変動しうるものであり,地殻内の流体圧・浸透率変動の具体的な描像を得ることが出来つつある.
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Strategy for Future Research Activity |
アパタイトー水溶液反応実験による反応輸送プロファイルの作成を継続するとともに,水溶液組成の経時観測による実効拡散係数の測定を行う実験系を立ち上げ中である.これにより,流体活動時間スケールを制約する上で不確定性のあるパラメータの実効拡散係数を,封圧・温度・流体圧の関数として測定する.上記で得られた実効拡散係数を用いて,天然の反応輸送プロファイルを解析することで.亀裂閉塞の時間スケールを天然岩石から実証し,地殻内における流体圧変動のダイナミックな描像を明らかにする.
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