2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Particulate Matter Generator from Marine Fuel Oil for Element Test
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18K13944
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
中村 真由子 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (10762057)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 粒子状物質 / 舶用機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気環境の粒子状物質(PM)規制が強化され、近年では自動車のPM排出が低減している。一方で、船舶から排出されるPMは、硫黄分の規制によって削減されているが、依然として高いPMが排出されている。そのため、PMの分析・削減方法の研究が求められている。しかし実機関の運転には、大量の燃料が必要であり、機関の型式や気温・湿度、燃料性状等の多くのパラメータがPM排出量や組成に影響するため、安定したPMを繰り返し得ることが難しい。PMの組成を制御し、安定してPMを発生できれば、分析法や削減法の基礎研究ができる。本研究では少量の舶用燃料や模擬燃料を燃焼させ、組成の異なるPMを意図的に生成する装置を作製し、装置から生成する粒子の特性を明らかにし、PM成分分析法の一つである炭素成分分析法を改善することを目的としている。 2019年度では、①燃焼装置作製、②燃焼試験の実施と装置改良、③燃料成分および実燃料油の燃焼試験の3点を実施した。燃料成分の単物質および実燃料で燃焼試験を実施し、PMが捕集できることを確認した。捕集したPMの有機炭素(OC)および元素状炭素(EC)を分析した。OCは燃料油の未燃分で、ECは不完全燃焼由来で、所謂“すす”である。着火性の高い単物質から生成したPMはECがほとんど生成されなかったが、着火性が極めて低い単物質を10%程度混合すると大量のECが生成した。実燃料油を燃焼させた結果、OC、ECともに大量に生成し、実機関よりもOCの割合が多い条件があった。燃料の蒸発量が多いためと考えられ、装置の改良を継続する。また、PM捕集量が予想以上に多かったことから捕集前に希釈する等の対策をする必要がある。舶用機関で実際に使用されている燃料の燃焼とPM生成ができるようになったため、今後実機関とのPM組成の違いが把握できれば、分析法および削減技術の開発に貢献できる装置となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度では、①2018年度に完了しなかった燃焼装置作成、②燃焼試験の実施と装置改良、③模擬燃料および実燃料の燃焼試験、以上の3点を実施した。 ①前年度で検討したヒータ部、燃焼空気整流部を反映させ装置を作成した。本装置は引火点が100℃を超える燃料油をプール燃焼させるために、燃料カップにバンドヒータを巻いて高温に設定できるようにした。アルミナボールによって空気を整流し、外乱を防ぐために観察部を兼ねた石英円筒ガラスで火炎を包むことで、安定したプール燃焼となった。サンプル捕集部は、全量をサンプリングでき、分析点数を増やせるように直径70mmのフィルタを使用できるよう設計した。 ②ヘキサデカン、1-メチルナフタレンで燃焼試験を実施し、装置を改良した。ヘキサデカンは着火性を示すセタン価が100であり、非常に着火しやすい燃料成分である。1-メチルナフタレンはセタン価が0であり、非常に着火しにくい。サンプリング時にフィルタ捕集部でサンプルの漏れやフィルタの破損が生じたため、当初使用していたパッキンをOリングに変更する等の改良をした。ヘキサデカンのみを燃焼させた場合、PMの生成量は極めて少なく、OC成分のみで、ECは検出されなかった。燃料の蒸発成分をフィルタが捕集しており、不完全燃焼由来のECは生成されなかった。一方で1-メチルナフタレンを10%添加すると、ECの生成が急増した。1-メチルナフタレンはEC生成に大きく影響していた。 ③実燃料であるA重油とC重油を燃焼させ、PMを捕集し、サーマルオプティカル法によって有機炭素(OC)と元素状炭素(EC)を分析した。OC、EC共に検出され、空気量を変化させるとその割合や生成量が変化した。しかし、系統的な結果は得られず、来年度はデータ数を増やして検討を進める。捕集時間を1分と短くしても、捕集量は非常に多く、希釈等のサンプリング方法を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
PM生成装置の作製が完了したため、改良を継続しつつ、実機関で使用されている重油の燃焼試験および生成されたPMの詳細分析を実施する。作製した装置では、生成するPM量が非常に多く、現状では全量をサンプリングしているため、フィルタに捕集されるPM量が非常に多い。今回特に着目しているサーマルオプティカル法は高濃度の分析に適していないため、分流や希釈等のサンプリング部の改良が必要である。 PMの詳細分析では、燃料油中の硫黄分由来の硫酸塩等を対象とした分析を実施し、装置によって生成されたPMは実機関から排出されるPMとどのように異なるかを明らかにする。さらに、PM中の炭素成分の分析方法として着目している、サーマルオプティカル法のプロトコルについて検討するために、様々な組成のPM生成を目指す。プロトコルは分析時の温度設定や時間設定等であり、分析値に大きな影響を与えるため、分析対象に適した条件を探す必要がある。舶用機関から排出されるPMは硫黄分や金属分を含み、PM量が非常に多い。また、機関の型式によって、ECとOCの割合が大きく異なるため、ECとOCの割合を大きく変化させる方法を考えたい。PMには燃料油成分だけでなく、潤滑油成分も含まれている。まずは、潤滑油を燃焼させる試験を実施し、潤滑油成分が混合したPMを生成できるように、装置を改良したいと考えている。
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Causes of Carryover |
装置の製作が予想よりも安価に済んだが、次年度に装置改良が必要なため、改良のために使用することとする。
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