2018 Fiscal Year Research-status Report
災害を含む空間履歴を考慮した避難場所および避難ルートの適切性評価に関する研究
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18K13962
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
高田 知紀 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60707892)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 災害空間履歴マップ / 防災における神社の利活用 / 神社空間の形成契機 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,災害空間履歴マップの構築に向けた次の作業を行った.まず,近畿圏における過去の大規模自然災害の履歴を抽出である.主に,これまでに行われてきた遺跡発掘調査の報告などにみられる災害痕跡を精査し,その災害の規模および位置情報を抽出した.次に,和歌山県全域,徳島県全域,および兵庫県淡路島内における神社や古墳などの遺跡の位置情報および由緒などの情報に関するデータベースを構築した.和歌山,徳島,淡路を対象地域としたのは,南海トラフ巨大地震が発生した際に津波などの大きな被害が想定される地域だからである.さらに,同じく和歌山,徳島,淡路における指定避難所と緊急避難場所をリストアップし,GIS上にプロットした.上述の作業によって,災害を含む空間履歴を考慮した避難場所および避難ルートの評価を行うための基礎となる情報を整理することができた. さらに,神社がなぜその場所に立地しているかということについて,神社の由緒をもとに類型化を行った.具体的には,和歌山県下の神社419社を対象に,各神社の由緒や伝承を調査し,神社空間が形成されてきた4つの契機,すなわち①ランドスケープ型,②神勅型,③巡幸型,④勧請型の4つの類型に分類した.今後は,神社を大規模自然災害発生時における避難場所の選択肢とするうえで,神社の創建時期や遷座の経緯,さらに神社空間の形成契機をふまえて考察を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,初年度において災害空間履歴マップ構築のための基礎的な情報を整理し,それらを統合的に分析するための準備が整ったことからおおむね順調に進展していると考えることができる.ただし,文献およびGISによる調査を中心に行ったことから,和歌山,徳島,淡路などでの現地調査を当初の計画通りに十分に行うことができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,初年度の成果をもとに焦点を絞り,地域防災における重要なロケーションとしての神社や古墳・遺跡などの現地調査を行う.現地調査では特に,過去の災害に関する石碑などの有無を調査するとともに,その地域住民への防災意識への効果・影響をインタビューなどによって定性的に把握する.さらに,2018年度に整理したデータをもとに,和歌山,徳島,淡路における災害空間履歴マップを構築する.災害空間履歴マップを用いて,南海トラフ巨大地震が発生した際に津波による大きな被害が想定される和歌山県御坊市,兵庫県南あわじ市,徳島県海陽町をモデル地区に,現在の緊急避難場所および指定避難所までの避難ルートの適切性を評価する.
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Causes of Carryover |
2018年度の予算執行額については,当初計画より旅費の支出が少なくなっている.その理由としては,当初計画から変更して,2018年度は文献およびGISを用いた基礎的情報の整理と分析を先行させたことから,和歌山,徳島,淡路への現地調査を2019年度に行うこととなったからである.
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