2019 Fiscal Year Research-status Report
災害を含む空間履歴を考慮した避難場所および避難ルートの適切性評価に関する研究
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18K13962
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
高田 知紀 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60707892)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 災害履歴 / 神社 / 地域防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、災害空間履歴マップをもとに、主に和歌山県下において神社空間の防災拠点としてのポテンシャルを検討した。本研究課題で災害空間履歴マップを構築したことによって、南海トラフ巨大地震による津波、河川氾濫、土砂災害などの災害リスクに対して安全性を有している神社を抽出した。さらに2018年度に類型化した4つの神社空間形成契機、すなわち①ランドスケープ型、②神勅型、③巡行型、④勧請型に加えて、⑤偶発定着型を新たに見出した。また、和歌山県下の神社空間を対象に、立地の地形特性、災害リスクポテンシャル、神社空間形成契機のそれぞれの関係について考察を行った。地形特性については、河岸段丘、河川低地、海岸段丘、海岸丘陵、低地、丘陵地、山地、山麓地、盆地で分類した。その結果、地形特性、災害リスク、形成契機の間に統計的に有意な連関はみられなかった。しかし、紀ノ川下流部の16か所の神社を対象により詳細な地形特性をみてみると、3か所が台地上、10か所が自然堤防上、3か所が氾濫原湿地上に立地しており、高い確率で微高地にあることがわかった。また、和歌山県下の個々の神社の由緒から災害履歴を分析していくと、大規模な災害のなかでその神社周辺だけ被害を免れたパターン、災害を受けてより安全な場所に遷座したパターン、災害を受けても元の場所に再建したパターンがみられることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、当初計画のとおり、災害履歴マップの作成から和歌山県下における神社空間の立地特性とその災害ポテンシャルを検証できていることから、おおむね順調に進んでいると判断できる。ただし、災害碑や神社における災害履歴の有無が地域住民の防災意識に及ぼす影響については、2019年度内に地域住民へのヒアリングおよびアンケート調査を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には、神社の由緒や災害履歴および地域に建立された災害碑などが地域住民の防災意識に及ぼす影響についてアンケート調査を行う予定である。具体的には、1953年の紀州大水害で甚大な被害の出た有田川流域を対象に、災害碑の分布と地域住民の意識との関係について考察する。
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Causes of Carryover |
2019年度の使用額については、旅費の支出が計画より少額となっている。その理由は、現地調査を和歌山県を中心に実施したため、また3月に予定していたオーストラリアでの研究会を新型コロナウィルスの流行による影響で自粛したためである。
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