2020 Fiscal Year Research-status Report
災害を含む空間履歴を考慮した避難場所および避難ルートの適切性評価に関する研究
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18K13962
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
高田 知紀 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (60707892)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 防災拠点としての神社 / 避難場所・避難所の適切性 / 地域社会における神社 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,主に和歌山県下の神社の立地特性,神社空間形成の契機,現在の神社空間の災害リスクポテンシャルなどの情報をもとに,具体的な神社の避難場所としての活用方策について考察を行った.考察の対象としたのは和歌山市の有功地区に鎮座する式内社・伊達(いたて)神社である. 伊達神社の詳細な災害リスクをみてみると,まず神社が位置するのは,大阪府と和歌山県を隔てる和泉山脈の南麓に伸びた砂礫台地の先端丘陵上であった.地形分類では,参道は細長く伸びた尾根地形であり,その両側は谷底低地となっている.有功地区は紀ノ川の氾濫時には大部分に甚大な被害が出る.和歌山市の指定の避難場所・避難所となっている有功小学校は,その一部が過去の水害で浸水していることがわかった.一方で伊達神社は,過去の水害においても境内が浸水することはなかった.また土砂災害や南海トラフ巨大地震による津波のリスクについても安全な立地となっている.以上の結果から,伊達神社を地域の防災計画のなかで重要な拠点として位置付けていくことは一定の意味があると考えられる. 神社空間を地域防災のひとつの拠点として適切に位置付けていくうえでの課題は,コミュニティと神社とのかかわりの希薄化である.伊達神社では,神職や氏子,その他の地域住民が協働しながら,地域の防災意識を高めていくためのイベントやプロジェクトを実施している.そのような活動では,広く住民が共有できる「地域防災」というテーマを入り口に,多様な住民のインタレストや地域課題の視点を組み込んだ包括的なアプローチを展開していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度には,防災拠点として活用されている神社空間やその他の祭祀施設の関係者にヒアリングを実施する予定であったが,コロナ禍による移動や対面接触の自粛のため,実行することができなかった.また,国際会議での研究成果の発表を予定していたが,同様の理由により実行することができなった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を延長した2021年度は,神社空間の地域防災での活用のモデルケースとして和歌山県の伊達神社を位置づけ,その実践プロセスの構造を詳細に分析する.また,和歌山県下の神社関係者に郵送およびWebでのアンケートを実施し,神社空間の防災拠点としての活用可能性を広く検証する.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,国際会議への参加および国内出張の多くをキャンセルしたため.
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